――一時期映像編集ツールもクラウド上で動かすという流れがありましたが、昨今はツールはローカルで動かして、プロジェクトファイルや素材だけクラウドに置くという流れも出てきています。ソニーとしてはどっちの方法が芽があるとお考えですか?
立川: 具体的な流れとしては、やっぱりネットワーク上にサービスが集約されていくという世界になっていくんだろうなというふうには思ってます。そういう意味もあって、今回このプラットフォームをご提案させていただいているというのもあるんですけど。
ただ一方でオンプレミスのシステムといいますか、ローカルベースのさまざまなソリューションも、そんなにすぐになくなるというふうにも思っていません。今回も制作プラットフォームという形で一般のお客さまに展開してますけど、これまでのImaging Edge MobileですとかImaging Edge Desktopというアプリケーションも、Creators’ Cloudという1つのブランドの中に包含する形にしたんですね。
いろいろな形でオンプレミスとクラウドのソリューションを調和させたり連携させたりしながら、うまくお客さまのワークフローに沿った形っていうのを提案していきたいなというふうに思っています。
――つまり将来的には、ユーザーがオンプレで動いてるのかクラウドで動いてるか、あんまり意識しなくてもいいような感じで動くっていうことでしょうか?
立川: そういう世界が一番理想的だと思うんですよね。結局インタフェースっていうのはお客さまの一番近くにあるタッチポイントであって、その先がオンプレなのかクラウドのかって、正直お客さまにとってはどちらでも良いわけで。より早く、より効率的に、品質高く処理ができればいいというものだと思うので。
そこの境目を何かしっかり持って、あれはあっち、これはこっちっということではない世界というのが、究極目指す姿なんじゃないかなというふうに思いますね。
――現時点での個人向けCreators' Cloudって、無料でアカウントが作れて、ソニーのカメラを登録すると25GBまで使えるわけですけど、このサービスでは収益性がないですよね。これはどこで利益を得るモデルになっていくんでしょう
立川: 例えば今回、Master Cutはβ版というかっこ書きをつけて出させていただいてますけれども、本当にこれからお客さまの声を聞きながらどんどんブラッシュアップできるものだと思うんですよね。今はあくまで、お客さまの利便性の向上や満足度を高めるサポートをするという形で、私たちもいろいろなチャレンジをさせていただいて。
より良いものになってお客さまに対価をいただいても使っていただける価値のあるものだというふうに認めていただけた段階で、いろいろな価格を伴ったプランなどを出させていただいたりして、事業化ができればいいかなというふうに思っています。
現在ジェネレーティブAIは、次々に新サービスやアップデートが展開されているところだ。一方で補正や映像処理系のAIは、有料のプロフェッショナルツールだということもあり、その中身までは分からない。著作物そのものを扱っている事もあり、AIの扱いもセキュアな状態でしか触れないというのが実情だ。
そんな中で個人向けCreators’ Cloudでは、Master Cutを経由して画像処理系AIが誰でも触れるようになっている。サービス全体もまだこなれていないというか、作っている最中のような感じだが、こうした「走りながら考える」ぐらいのスピード感で作っていかないと今の時代に追い付けないのだという印象を持った。このあたりが、ちゃんと完成していないとお金が取れない法人向けサービスとは決定的に違うところなのかなと思う。
今後はこの個人向けCreators’ Cloudをベースに、さまざまな実験的機能が投入されてくる事だろう。ユーザーからのフィードバックで作り上げていく部分もあるだろうが、どこかの段階でオープン化していかないと、今のAI開発のスピードに乗れないのかなという気も同時にしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR