それぞれの置かれた現状を踏まえ、特色あるデジタル戦略を進める神戸市と浜松市。しかし、先進的な取り組みには、それに見合った人材が必要なはず。職員の給与など、待遇の柔軟な設定に制限のある公的組織にとって、デジタル人材の不足は民間企業以上に深刻な課題だ。両市は、どのようにデジタル人材の確保・育成に臨んでいるのか。
まず神戸市は、デジタル人材かどうかを問わず、人材採用の幅を広げて対応しているという。久元市長は「DXやデジタルという切り口だけをことさら重視するのではなく、人材採用・育成の基本的な考え方に立ち戻る必要がある。重要なのは人材の多様化だ」と強調する。
神戸市の従来の新卒採用では、「事務職は法学部、経済学部、経営学部系が中心で、あとは土木職、建築職、農業職、設備職などの分野ごとに、関連する学部を卒業した人材を採用していた」(久元市長)。しかし、従来の縦割りの組織構造でキャリアを重ねるだけでは対応できない課題も増えてきたことから、新たな人材採用方式にシフトしているという。
例えば、美術、音楽、映像などを専攻した学生を対象とした「デザイン・クリエイティブ枠」という採用枠を新設。ただし、この枠で採用した人材がWebページやポスターのデザイン、PR動画制作などの担当者になるわけではない。通常業務の中で、デザイン・クリエイティブで培ったアンテナの高さやクリエイティビティーを発揮してもらうという。
「デジタル活用のスキルや能力の育成も、クリエイティビティーを発揮してデータやテクノロジーをいかに有効に活用するかという視点で考えるべき」(久元市長)
新卒一括採用偏重からの脱却も重要課題だ。神戸市の2024年4月の採用は、半数がキャリア採用になる予定。高度なスキルを持つデジタル人材の応募も少なくないという。
「デジタル庁であれ、地方自治体であれ、(公的機関は)それほど高額の報酬は出せない。しかし、東京に出てIT企業で働いていた神戸出身の優秀な人材が、年収が大幅に下がったとしても地元の役に立ちたいという思いを持って転職してきてくれるケースは増えている。培ったスキルを生かして地域の課題の解決に貢献したいと考える人が増えているのは好ましいこと」(久元市長)
人材育成についても、AWSの研修・トレーニング、検定の導入といったデジタル活用スキルの育成に特化した取り組みを強化。大学への留学や国家資格取得の支援まで「人材の多様化」を意識した幅広い施策を試行錯誤しながら進めているという。
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