一方、浜松市の鈴木市長は「体系だった人材育成をしているわけではないが、浜松市のデジタル人材育成には大きく2つのポイントがあると思っている」と話す。
一つは、庁内の人材発掘と適切なミッションの設定だ。同市はデジタル活用スキルや業務改革手法などの研修を受けた中堅職員を「DX支援者(メンター)」に任命し、DXのけん引役として育成している。現在、DXメンターは25人だが、24年度末までに75人程度まで拡大する計画だ。
「トップが無理難題を言っても、それ面白いからやりましょうと言って付いてきてくれる『とがった人材』をいかに発掘するかが大事。まずは将校を養成して組織の体質や意識を変え、全体の底上げにつなげていく」(鈴木市長)
さらに、デジタル活用を前提とした地方自治体の変革を進めるにあたっての行動規範「浜松市LGX(Local Government Transformation)行動規範」も策定。これにより、ITリテラシーなどの全体的な底上げも図っている。
もう一つのポイントは、「外部の血」を取り入れることだ。鈴木市長は「浜松市は、この人いいなと思ったらすぐにフェロー(外部人材)にしてしまう。それが強烈な武器になっている」と話す。その言葉通り、浜松市では6人の外部人材が「スマートシティフェロー」という役職に就いている。
市内外のスタートアップ企業のコミュニティー形成にも積極的に取り組んでいるという。鈴木市長はできるだけ小さな会合にも足を運び、ビジネスパーソンとの付き合いを重ねてきたと強調する。
「例えばビズリーチを創業した南壮一郎さんは私の高校の後輩にあたるが、彼に頼んだら浜松出身の起業家を10人、20人と平気で集めてくれたことがあった。同じ地域出身だとか、同じ業界だとか、そういう要素が重層的に絡みあう中で、ITビジネスの先端にいる人たちが逆にアナログな付き合いを大切にして、仲間意識が形成されている。スタートアップのコミュニティーをつくりたいなら、市長自身がそこにどっぷりと漬からなければならない」(鈴木市長)
一連の取り組みは、スタートアップ企業やベンチャーキャピタルに職員を出向させるスキームの構築につながったという。「外部のいろいろな面白い人とつながりながら新しい取り組みに携わることができるというのは、庁内の職員のモチベーションや行動にも大きく影響する。スタートアップに派遣する職員には、その気になったら浜松市を辞めて自分で起業してもいいといっている。それくらい思い切ってやらないと組織は活性化しない」(鈴木市長)
神戸市・浜松市に共通するのは、好奇心を持ち、課題の解決だけでなく課題の設定や発見にも能動的な「クリエイティビティーの高い」職員を発掘・育成しようとする姿勢だ。方法はそれぞれだが、先進的な取り組みを支えるには、相応の積極性が必要といえるだろう。
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