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最後は必ず“ネコギュウギュウ” 猫の習性をルールに生かした陣取りゲーム「ネゴ」誕生秘話分かりにくいけれど面白いモノたち(3/7 ページ)

» 2023年08月26日 12時30分 公開
[納富廉邦ITmedia]

頭の中をネコでいっぱいにしてほしい

 「猫で商品開発をしてデザインすることは続けていきたいというのはあったので、社内でいろいろアイデアは出し合っていました。考えては却下し、また考えてはボツにするという作業の中で、ボードゲームという案が出て、それが実現性が一番高そうに思えたので、その方向で具体的に考えていったんです」。実は、コネコカップからボードゲームを作ろうと決めるまで約2年かかったという。それだけ多くのアイデアが吟味された中での決定だったというわけだ。

「『ネコカップ』や『コネコカップ』は、砂や雪や食品で実際にネコを量産して、現実世界をネコでいっぱいにしようという製品ですが、『ネゴ』は、ゲームを遊んでいる内に頭の中をネコでいっぱいにしてほしいという製品なんです。そんな風に、リアルもヴァーチャルも、我々のあらゆる次元をネコにしたいという野望はあります」と森井氏。

「ネゴ」の駒たちは5種12個×2組。4マスを占有する「ボスネコ」の他、「ノビネコ」、くの字に曲がった「クノジネコ」、ネコカップ風の「コウバコネコ」、コネコカップ風の「マメネコ」がある
ボードは8×8マス。アクリル製だが、表面が磨りガラスのように仕上げられている

 ゲームを作るに当たって重要視したのは、「カテドラル」や「タロ」のような、ゲーム中に盤上が美しくなっていくものだったという。だから、ゲーム終了時に盤上がネコでギュウギュウ詰めになっているという、その状況こそ、このゲームの重要なポイントなのだ。だからこそ、ゲーム盤は広過ぎてはいけないし、ネコの形の駒は、小さ過ぎず、大き過ぎず、指に馴染む必要がある。

 「森井は造形家なので、最初にまず、自分が作りやすいナチュラルな心地よい大きさで、まずサンプルをパパーッと作ったんです。それが、ほとんど製品の大きさと同じでした」と野島氏。

 「私は元々デザイナーでしたが、平面的なものやキャラクターデザインを主にやっていたので、プロダクトデザインというのはまだ駆け出しなんです。『ネコカップ』がほとんど初めてだったので、私がプロトタイプを提出したあと、素材や形についてアッシュコンセプトさんといろいろやり取りして作っていくものだと思っていたんです。それを名児那さん(アッシュコンセプト代表)が『こういうのは最初に作った、情熱が形になっているものが一番いい』というふうに仰って、それなら、最初に作った原形でお願いしますと、すんなり決まったんです」と森井氏。

 「ネゴ」の駒も、森井氏が作った原形を元に製品化されている。しかも、今回は、原形から直接型をとり、soilの職人の手により微調整を施した上で作られているため、より原形に近い形になっているという。

石膏の質感を感じつつ、盤上にパチリと置くときの指先に伝わる感触も楽しい

 この石膏で手作りされた駒の造形と質感こそが、何よりこのゲームの魅力になっていると思うのだ。珪藻土のバスマットなどでお馴染の、soilによる左官会社ならではの技術による手作業で作られたネコの駒は、滑らかながらマットでひんやりとした手触りがあり、適度な重さがあって、アクリル製の盤に置くと、パチリと良い音がする。

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