「日本でAzure OpenAI Serviceを活用している企業数は560社以上」──日本マイクロソフトが10月23日に開催した、AIに関するメディア向け説明会にてそのように明かした。2023年1月のサービス提供から約9カ月での成果で、全世界では1万1000社を突破。中でも日本では、金融や自治体での利用が他国よりも非常に速く進んでいるという。
Azure OpenAI Serviceは、Azureから米OpenAIが提供する「GPT-3.5」や「DALL-E」などのAIモデルのAPIにアクセスできるサービス。各企業のセキュリティポリシーに合わせつつ、AIモデルをアプリケーションに組みことができる。
同社のクラウド&AIソリューション事業本部長で執行役員でもある岡嵜禎常務は「なぜこれだけ利用が進んでいるかというと、クライアントにとって効果が分かりやすく、『これはいけるぞ』と手応えを感じてもらっているから。規制が厳しい業界でも、利用のためのガバナンスなども併せて整備していく動きがあり、それがこのブームの特徴にある」と話す。
国内でのAzure OpenAI Serviceの利用事例として、メルカリとベネッセホールディングを紹介。メルカリでは10月に実装した利用者向けAIアシスタント機能にAzure OpenAI Serviceを採用している。これは、出品済みの商品をAIが分析し、より売れやすくなるようなおすすめの商品名を自動生成するなど、改善策を提案する機能だ。
ベネッセでは、夏の間にチャットAIを活用した小学生の自由研究を支援するWebサービスを公開した。例えば、チャットAIに「読書感想文で星の王子様の感想ってどうですか?」と相談すると「まずは本を読んでみよう」「星座について、こういうことを考えてみよう」など、答えを教えるのではなくアドバイスを提供する機能となっている。
またAzure OpenAI Serviceでは新たに、アプリやサービス内の有害なコンテンツを検出する機能「Azure AI Content Safety Service」が登場。「GPT-3.5-Turbo」「Babbage-002」「Davinch-002」などのAIモデルでファインチューニング(事前学習したモデルを再度トレーニングしてパラメーターを微調整する手法。新たな知識を学習させることが可能で、特定タスクのパフォーマンスを向上できる)が可能になるなどのアップデートも実装している。
続いて岡嵜常務は、AI導入に向けてMicrosoftが重要視しているポイントを3つ紹介。「Copilotによる生産性の向上」「お客さまのAI基盤の構築」「ビジネスとデータの保護」を挙げた。
岡嵜常務は「『Copilot』(副操縦士)の名の通り、主役はあくまで人間で、AIはそのサポートする形を当社は目指している」と説明。ソフトウェア開発者向けに「GitHub Copilot」、ナレッジワーカー向けに「Microsoft 365 Copilot」など、さまざまなCopilotサービスを提供することで、生産性が向上した事例が集まっていることをアピールした。
また、生成AIを使って“自社専用GPT”を作るとなると「やはり難易度は高くなる」と岡嵜常務は指摘。同社ではそれに向けたサポートも行うが、自社専用GPTを作らずとも、AIモデルと自社のデータ、アプリが連携するための基盤を作り、それらをやりとりさせることで効率よくAIを活用可能という。岡嵜常務は「これで顧客のニーズの9割以上を解決できる」とし「顧客のビジネススピードに合わせてより効率的な進め方を推奨したい」(岡嵜常務)と話す。
3点目の「ビジネスとデータの保護」については、生成AIの企業利用ではデータのセキュリティや著作権などのリスクが懸念点として挙げられると説明。それに対しMicrosoftでは、Copilotの利用企業がサービス使用中に著作権侵害で訴訟を起こされた場合、法的責任を負う「Copilot Copyright Commitment」の取り組みを行うなど、注力しているという。「金融機関などの利用もあることから、この部分はクリアできていると考えてもらっていいと思う」と岡崎常務。
今後、Microsoftでは全ての製品に生成AIを導入していく。同社は「生成AIの事業化、商用化するためのノウハウ世界有数のエッセンスを持っている」と自負し、このノウハウをパートナーに向けに提供する「Microsoft生成AI事業化支援プログラム」を始めるという。その詳細は11月下旬に案内するとしている。
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