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「バリスタみたいな存在に」 アプリが淹れ方をエスコートするコーヒーメーカー「DRIP POD」にUCCが込めた思い分かりにくいけれど面白いモノたち(1/5 ページ)

» 2023年10月31日 13時01分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 UCC上島珈琲の「DRIP POD YOUBI」は、いわゆるカプセルタイプのコーヒーを使って、ハンドドリップと同じ淹れ方ができるコーヒーメーカーだ。同ブランドの4代目となる新製品では、スマホアプリと連携して、様々なドリップのレシピを楽しめる製品になった。これだけの説明だと、なんとなく個性が薄い製品のようだが、これが、実はかなり面白いコンセプトと機能を持った製品なのだ。

UCCの「DRIP POD YOUBI」。オンラインストア限定のスターターセットは2万4900円

 コーヒーメーカーという存在は結構難しいというか、なかなか曖昧な領域にある製品だと思っている。オフィスなどに置かれているコーヒーマシンは分かる。コーヒーには機能的な飲み物としての側面も大きいし、仕事の合間にサッと飲めたり、来客などに素早く温かい飲み物を提供するマシンは、かなり有用だと思う。

 難しいのは家庭用のコーヒーメーカーだ。一日に何杯も飲むならば、それなりに有用だとは思う。しかし、ペーパーフィルターを使ったハンドドリップと比べた場合、洗い物は増えるし、メンテナンスが面倒だったりもする。それを考えると、ハンドドリップの方が楽に美味しいコーヒーが飲めるということになってしまう。

 もちろん、ハンドドリップは慣れも必要だし、お湯を沸かすのに時間と手間はかかる。それでも1〜2杯淹れるだけなら、コーヒーメーカーとの時間差は数分だ。

 そういう意味では、ネスカフェの「ドルチェグスト」は、とても完成度が高いコーヒーメーカーだと思っている。水とカプセルをセットして、カップを置けばあっという間にでき上がるし、洗い物も水タンクとカプセルを受けるホルダーと、カップの下の水受けだけ。メンテナンスもたまに水通しをする程度でよいというのは、ハンド・ドリップの数倍楽なのだ。しかも、ココアやラテもカプセルを替えるだけで作れてしまう。そして、何よりちゃんとおいしいのだ。

 しかし、おいしいコーヒーが飲みたいという場合に人が求める味は様々。しかも、ここ数年はおいしい豆があちこちで普通に買えるようになって、好みの味が選び放題。当然、そういう嗜好に応えるコーヒーメーカーも登場する。

 その流れは分かる。でも、そうなると、結局のところ「おいしいコーヒーの正解」みたいなものが求められることになる。豆を用意するのも、豆の分量を量ってセットするのもユーザーで、そこにブレは出るのに、淹れ方についてはプロのレシピと方法論が使われる。

 だったら、自分の好みが分かってる人がハンドドリップで淹れる方が、確実においしくなるのではないだろうか。それは、実際にいくつかのコーヒーメーカーを試して思ったことでもある。もちろん、十分においしいけれど、マシンの違いによる味の差よりも、豆の違いによる味の差の方が大きいのだ。ならば、コーヒーメーカーを買うお金で、好きな豆を買いたいと思ってしまう。

 もちろん、上手に淹れられるなら苦労はないという人もいると思う。そういう人が、自分好みの味で淹れてくれるコーヒーメーカーを購入するのは大いにアリだと思う。ただ、その場合、問題なのは、自分に合うコーヒー・メーカーがどれかを見つける難しさだ。それはほとんど、お気に入りの喫茶店やカフェ、コーヒーロースターを見つけるのと同じだし。

カラー・バリエーションは5色。左はストア限定のボタニカルグリーン。中央の3つ、左からラッカーレッド、スチームホワイト、ミッドナイトブラックが定番カラー、一番右はDEAN & DELUCA限定のソイルブラウン

 というようなことを考えながら、9月末に開催されたスペシャルティコーヒーのイベント「SCAJ 2023」を取材していて出会ったのが、「DRIP POD YOUBI」だった。プロのレシピで淹れられるコーヒーメーカーという感じだったので「ああ、やっぱりそっちの方に向かうのかな」と思ったのだけど、デモを見ているとちょっと様子が違う。そして、使うコーヒー豆も、買ってきたものをセットするのではなく、かといってカプセルタイプでもなく、カプセル型のフィルターの中にあらかじめ粉がセットされているという独自のものだった。

このようにカプセルをマシンにセットする。カプセルの中には豆を挽いた粉が入っていて、カプセルとそれを受けるホルダー全体がドリッパー的な役割になる仕組みだ

 このカプセルが、まず良くできている。これを本体にセットすることで、コーヒー1杯分のドリッパーが完成するようになっているのだ。

 そこに、既に量が正確に計られたコーヒー粉が入っている。そりゃUCCなんだから、豆も自前で用意するよねと納得するが、しかし、これはもしかすると、「ドルチェグスト」タイプとハンドドリップ・シミュレータータイプのハイブリッドなのではと思い、話を聞き、試飲して、ちょっとビックリしたので、取材を申し込んだのだった。

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