アプリ上では、朝にはこれ、といったストレートな表現になっていないのもいい。ネーミングやコメントの中にさりげなく入れたり、大きく配置された写真で、なんとなくそういうムードを演出したりしているのだ。押し付けも決断も迫らない構造。「とにかく、感覚で選べるようにインタフェースには気を遣いました。エスコートするためにアプリを作ったので、そこが辞書みたいでは意味がないんです」と小牧さん。
今、アプリで選べるレシピは20種類。カプセルによって、1つのものもあれば、「ホンジュラス&コロンビア」のように3つあるものもある。そして、当然、これらは増えて行くことになる。
レシピを作った理由には、どうしても気に入った豆2、3種類をリピートするユーザーが多かったからというのもあるらしい。「気持ちは分かるんですけど、私たちは世界のコーヒーを旅するように味わっていただきたい。そう思った時に、レシピがあれば、新しい豆を買って失敗したらどうしよう、口に合わなかったらどうしようという不安を払拭してもらえるのではと考えたんです」と小牧さん。
さらに、家の中のあちこちで、好きなスタイルでコーヒーを楽しんでもらうために本体にキャリーハンドルを付けたそうだ。そして、メインテナンスというか洗い物もとても少ない。水タンクとカプセル受けのホルダーと、カップの下の水受けだけ。しかも、それぞれが取り外しやすいように本体がデザインされているのだ。細かいところまで、本当に気が利いている。
使う豆、使うレシピによって抽出量も抽出時間も変わるコーヒー・メーカーというのは、考えてみればとても理に適っている。だってコーヒーというのはそういうものだから。基本的にブラックで飲むのに向くように調整された豆とレシピなのだけど、中には進氏もお気に入りの、カフェインレスの豆を使ったカフェオレ用のカプセルとレシピもある。
さらに、シングル・オリジンの豆もある。レシピの開発を行うプロは現在3人いて、それぞれの個性がある。もちろん、これがコーヒーメーカーの理想の形だというつもりはない。自分が好きな豆を自分好みに淹れるなら、やっぱり自分でハンドドリップした方が楽だし早い。
しかし、コーヒーを楽しむという点で、このマシンはとても良くできていると思う。なんと言っても、“究極の味”とか、“最高のコーヒー”とか、そういうことを一切言っていないのがいい。豆の違い、淹れ方の違い、気分の違い、時間の違い、そういった差違を楽しむツールというのは、なんだかとても未来的だと思うのだ。
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