ITmedia NEWS > 社会とIT >

運用費に不安? 自治体システム標準化・ガバメントクラウドに取り組む現場のホンネ 茨城県水戸市の場合ガバクラ・自治体システム標準化の行方(2/3 ページ)

» 2023年11月29日 14時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

水戸市のシステム標準化、現場に聞いてみた 課題と現状は

 ──水戸市のシステム標準化について、進捗を教えてください

板橋さん(以下敬称略) コンサルタントなどをはさまず、以前から契約を結んでいたSIerと協力して進めており、25年度末までの移行を完了できる見込みです。23年度中か24年度の早いうちに、既存業務と標準化した後のシステムをすり合わせ、整合性を検討する作業「フィット&ギャップ」を始めていく考えです。実際にシステムを導入したり、稼働したりするのは25年4月以降になると考えています。

総務省が提示する移行スケジュールの一例。必ずしもこの順番通りに進める必要はなく、状況に応じて各手順を並行して進めたり省略してもよいとしている

 ──水戸市では、どれくらいの規模の組織で標準化に取り組んでいるのでしょうか

板橋 関係課には標準化について伝えており、水戸市全体で意識できるようにしています。主管しているのは20人前後が所属するデジタルイノベーション課で、うち数人が庁内システムの担当者と連携しながら進めています。

 ──ガバメントクラウドのうち、どのクラウドサービスを使うかすでに決まっていますか

板橋 SIerの方向性に合わせ、Oracle Cloud Infrastructureを使うことになると認識しています。一部にAWSを使う可能性もありますが。

 ──システム標準化にかかる予算を教えてください

板橋 費用は5億数千万円程度を見込んでいます。当初の補助金の上限は2億数千万円程度で、このままだと差額は一般財源として自治体の負担になります。積み増しによって、全額を補助してもらう形で対応できればいいなと期待していますが、まだ正式な通知がきているわけではないので、その辺りは情報収集しながら進められれば。

北條さん(以下敬称略) とはいえ、不安な点は多いです。積み増しの話は導入経費について触れていますが、運用経費は言及がありません。

 標準化後の運用費が現状のシステム運用費より上がってくる可能性もあります。標準化の必要性は理解していますが、これまでより高くなる場合、費用面だけでいえば「これで本当に良かったんだろうか」という形になるかもしれない。

 そもそも、運用経費を含めシステムにかかる費用は、さまざまな手を尽くしながら精査し、費用対効果が最大化できるよう、ベンダーと緊張感を持って進めてきました。しかし、それが全部(積み増しによって)スタートに戻ってしまった。またイチから考えなければいけません。

 ──政府はシステム標準化とガバメントクラウドへの移行により、18年度比で運用経費3割削減を見込んでいるとしています。水戸市から見て、この指標は実現可能なものでしょうか

板橋 水戸市の場合、他の市町村とまとめてSIerと契約し、データセンターや回線を安く利用しています。そこからガバメントクラウドに移行して、果たして水戸市で3割安くなるかは、まだ不透明です。そもそも、(政府の指す指針が)全自治体の合計費用を3割減らすことを示すのか、各自治体が3割減を達成することを示すのか、明らかになっていません。

北條 今回、システム経費が注目を浴びていますが、自治体によって経費やベンダーとの契約体制はバラバラ。そんな中で一概に3割減という言葉だけが広がっており、市民からも期待されています。私たちが本当にそれに応えられるかというと、不安でしかない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.