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400万本売れた「パルワールド」早速プレイした 没頭するほど面白いのに、心の底から“申し訳なさ”を感じた理由(3/4 ページ)

» 2024年01月22日 16時49分 公開
[吉川大貴ITmedia]

ポケモンにない倒錯が、パルワールドにはある

 ここから少し、筆者から見たゲームとしてのポケモンの話をする。筆者はポケモンのシリーズ作品こそ「プラチナ」で止まっているが「ポケモンGO」やリメイク版の「ポケモン不思議のダンジョン」などスピンオフはある程度遊んでおり、グッズやメディアミックス作品にも時折触れている。

 そんな筆者にとって、ポケモンは「幼いころに好きになった、今も世界的な人気があるコンテンツ」に映る。一方で「ゆえに一番大事なところを見せてくれないコンテンツ」にも見える。

 筆者はポケモンの最大の魅力を「ポケモンがいる世界を想像させること」だと思っている。ピカチュウと一緒に過ごす日常、ポケモンがいることで成り立つ社会、ポケモンがいるから生まれてしまう悲劇、そういうものを疑似体験させたり、夢想させたりすることが、ゲームとしてのポケモンの楽しみだと思う。

 実際、ポケモン側も、そのように筆者の人生に歩み寄ってきたように感じる。2Dだったゲームは3Dになり、動きを眺めて楽しめるようになった。ARで日常にポケモンを投影できるようになったまだポケモンが社会に組み込まれていない世界も見られるようになった寝ているポケモンも見られるようになったポケモンの骨格標本が博物館に飾られることもあった。そうやってポケモンはリアリティーを高めてきた。

 一方で、ポケモンには世界で愛されるゆえに踏み越えられない一線があった。どれだけ「向こうの世界」の解像度が高まろうと、プレイヤー自身がキャラクターたちを殺したり労苦にさらしたりと、ひどい扱いをすることはなかった(より古いシリーズにはもう少し直接的な描写も見られた記憶もあるが)。悪役にやらせる、間接的に表現する、もしくは意図しない結果として描写されることがせいぜいだ。でなければ、長年築いてきた世界観が崩れてしまう。

 でも、より解像度の高い世界を夢想するには、それを自分でもやってみたいし見てみたいのだ。そうやって長年秘されてきた倒錯が眼前にあるのは、やっぱり面白いし興味深い。それを目の前に3000円と少しで吊るされたら、つい試したくなってしまうのだ。

 熱烈なポケモンファンというわけではなく恐縮だが、一方で筆者と似た心理のゲーマーは少なくないと思う。PCで遊ぶ人が増え、年をとってポケモンから距離を置いて、リアル志向のゲームを遊ぶ人も増えたのではないか。マルチプレイが当たり前になったことや、コロナ禍もそれを後押ししたのではないか。

 そしてリアル系ゲームの価値観が当たり前になったとき、改めてポケモンを見ると、一番大事な部分が見えないと感じる人もいるのではないか。パルワールドはそうやって、ある意味で長年ポケモンに焦らされてきた人々の心をかっさらっていったのではないか……と思う。ただ、だからこそ明確に良くない点もある。

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