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気分は上げるがテクニックは求めない──下村企販「珈琲考具」は“素人のための道具”だった分かりにくいけれど面白いモノたち(3/6 ページ)

» 2024年02月28日 11時45分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「そもそも、この細い口が加工できるかどうかも分からないところから始めました。で、やっぱり工場からは最初は『出来ないよ』って言われたんです。曲げの加工だけでなく、取り付ける部分も細くなるわけで、水漏れしやすかったり、壁は多かったんです。いくらコストをかけても良いというものでもないし、一般家庭のお客様が使える製品にしたいというのが一番にありましたから」と安達さん。

 直径にしても、細ければ良いというものではない。コーヒーの本などを読んで調査していく過程で、毎秒どのくらいの湯量がベストかを調べ、それを参考にして現在の6mmに行き着いたのだという。ただ、6mmだと本体に取り付ける部分で水漏れしないように加工するのは難しい。ここも従来は10mmまでだったところを、現場と協力しながら何度も試作を重ねて、加工方法を見つけてもらった。

注ぎ口を長くして、こんな風に、ドリッパーが大きくても、コーヒーの粉の近くでお湯を落とせるようにしている

 「実は、最初のポットでは真下には落ちなかったんです。6mmの注ぎ口で細くソフトに注げるというものでした。その次の製品で、これも試行錯誤しながら、注ぎ口の曲がる具合を調整して、真下に落ちる機能を実現しました。もう、とてもアナログで、いっぱい作って試すという方法で実現したんです」。さらに、今回の「ドリップポットITTEKI Pro」では、最後の曲げの部分から注ぎ口までの長さを調整。大きめのドリッパーを使った時でも、注ぎ口がドリッパーに触れずに、粉の近くからお湯を注げるように調整している。

 「お湯の角度を真下に落としたいというのは、私たちが考えたアイデアでしたが、注ぎ口の長さについてはユーザーさんからのフィードバックもありました。真下に落とす機能は、『ツードリップポット』という、1〜2杯用のポットを作った時に実装したのですけど、これがとても評判が良かったんです。ただ、やっぱり、4人分とか淹れたいという方もおられたし、何よりプロからの要望もあって、注ぎ口を長くしました」と安達さん。

ハンドルの形状にも工夫がある。3Dサンプルでのシミュレーションやモデリングを重ねて、使う人によってそれぞれ違う持ち方にも対応できる形状を探った

 実際に実験しながら開発されているので、その効果は確かなもの。本当に、楽においしくコーヒーが淹れられるのは前述した通りだが、さらに、ハンドルにも工夫があるという。「ポットのハンドルって、持ち方が決まっていないんです。プロの方にしても本当に、色んな持ち方をされるので、どんな風に持っても、指がしっくりと収まる形状を工夫しました」。

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