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フィルム最大手だったのに「世界初フルデジタルカメラ」を開発していた 富士フイルムのデジカメ史荻窪圭のデジカメレビュープラス(4/4 ページ)

» 2024年03月16日 07時14分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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FinePixからXへ

 X100も2011年に誕生した初代機は「FinePix X100」と名づけられていたが、2013年の2代目(X100S)からは「FinePix」が取れ、大きめのセンサーを積んだハイエンド機のシリーズになった。

 2/3型センサー搭載のX10からX30のシリーズもあったが最終的に残ったのはX100系だけだった。

 X20やX30あたりはなかなかXらしいユニークなコンパクト機で、復活しないかな、とは思ってる。

Xシリーズのコンパクト機「X20」(2013年)。この手動繰り出し式のズームリングの感触が良かった
2012年に「X10」で撮ったうちの猫。この写りなら今でも十分戦えそうだ

 スナップ用のコンパクトカメラとして優れたコンセプトだったと思うのだ。質感も良かったし。

 最後はデジタル一眼の話。2000年には「FinePix S1 Pro」を発売。これもニコンの一眼レフ用ボディを富士フイルムがデジタル化したという感じのカメラだったが、ニコンの豊富なレンズを使えること+富士フイルムならではの鮮やかな発色で一部で人気となったシリーズだ。

2000年、エンパイアステートビルの展望台から撮ったニューヨーク。奥に9.11以前のWTCのツインタワーが写ってる

 このシリーズは2007年のS5 Proで終了となる。

 そして2012年にX100のハイブリッドビューファインダーを搭載したレンズ交換式のミラーレス一眼「X-Pro1」が誕生するのである。Xマウントのミラーレス一眼のはじまりだ。

 一時期、X-Aシリーズなどエントリー向けの廉価なモデルも出ていたが、今のカジュアルな製品は「X-S20」のみ。

 その代わりプレミアムなカメラに注力し、主力のX-Tシリーズなどに加え、やがて35mmフルサイズより大きなラージフォーマットのセンサーを採用したGFXシリーズも登場し、90周年を迎えたわけである。

Xシリーズのルーツといえる「X100」やX-Pro系に一番近いメカダイヤル中心の操作を継承しているのが「X-T5」
1億画素の「GFX100II」。手ブレ補正も内蔵し、手持ちで撮れる1億画素中判ミラーレス一眼だ

 フィルムメーカーならではのブランド力を生かした「フィルムシミュレーション」も20種類を超え、フィルムメーカーならではの風合いのある写真……RAWで撮って現像で再現しようにも困難な写真を撮れるのも魅力だ。

 つまるところ、

  • 世界をリードするフィルムメーカーでありながらデジタルカメラを手がけたのはすごく早かったこと
  • フィルムメーカーならではのノウハウを生かした発色やフィルムシミュレーションで独自性を発揮したこと
  • レッドオーシャン(フルサイズのデジタル一眼などライバルがひしめき合うジャンル)にむやみに飛び込まなかったこと

 の3つが大きな特徴といっていいだろう。

 フィルムの研究・製造……つまり「化学」を手がけていた成果を生かして化粧品に進出したのもユニークなところだ。六本木にある「フジフィルムスクエア」を訪れると、カメラや写真エリアの隣に「ヘルスケアショップ」が置かれているほどである。

 祖業を生かしつつ、時代の変化にいち早く対応し、闇雲にシェアを求めなかったのがユニークだなあと思う次第である。

 昨今、日本での新製品価格がぐっと上がり(円安もあるが、日本での価格を割安に設定すると海外からの転売目的の買い付けが増えるため、その対策ともいわれている)、供給不足がアナウンスされがちで入手しづらいのが一番の難点かも。

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