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冷えた肉まんを入れておくだけで“熱々”に 電子レンジみたいな布バッグ「HO-ON」の革新性分かりにくいけれど面白いモノたち(3/6 ページ)

» 2024年03月23日 12時07分 公開
[納富廉邦ITmedia]

きっかけは「息子のお弁当を温めたい」

 WILLTEXのCTOである上田彩花さんは、この発熱する布に出会った、その最初のきっかけを話してくれた。「元々は、私と木村が同じ繊維を扱う商社の同僚で、その会社を辞めた後も、それぞれ別の仕事をしながら、連絡は取り合っていたんです。それで、繊維の会社の次に私が入ったのが、電子回路の基板などを作るメーカーで、そこが横浜国立大学と横浜消防局との産学連携で、消防士さんの活動中の心電や筋電を測って二次被害を防ぐウェアを作っていたんです」。

 上田さんは、この時のセンサー付きの防護服を作るために、布に導電性のペーストを塗って電極をプリントするといった実験を重ねていたそうだ。繊維関係の会社から基盤関係の会社に移り、その両方の経験が生かせる仕事をやっていたことになる。

 そこで、会社が展示会に出展することになり、そこでプレゼンできる製品のアイデアを担当することになった上田さんは、当時、中学生で野球をやっていた息子さんが、寒い中で冷たい弁当を食べているのをどうにかできないかと考えた。

 「なんとか、あったかくできないかなと思って、移動式の一人用暖房付きルームみたいなものができないかとか空想してました。バルーンみたいなのに入って移動できないかとか。そういう妄想を実現可能なレベルに落とし込んでいった時に、洋服が発熱したら暖かいんじゃないかと思ったんです。で、それをやることになって、生地に導電性のペーストを塗って、抵抗値を利用すれば熱が発生するんじゃないかというアイデアで、プロトタイプを作って展示したんです」と上田さん。

当初は、服の中にHOTOPIAを仕込む形で、アパレルメーカーや首都高速道路などに、布ヒーター部分を供給するビジネスから始まった

 その展示が首都高速道路株式会社の人の目にとまり、共同開発しないかと持ちかけられた。ただ、まだ製品ともいえないプロトタイプだったので、これを量産できるレベルに持っていく必要がある。そう考えた上田さんは、仲の良い工業ヒーターのメーカーに相談に行くが、そこは高温のヒーターが専門だったので、人間に使う用途のものはなく、その代わりに別のヒーターのメーカーを紹介してもらう。それが三機コンシスとの出会いとなった。

 「三機コンシスさんに伺ったら、そこが布ヒーターを作っていたんです。まさに私がやりたいことがそこにあったんです。でも、私、このアイデアを形にしようとした時に、インターネットでかなり深く掘って調べたんですよ。でも、布ヒーター的な製品は一切出てこなかったんです。どうして三機コンシスさんが出てこなかったんだろうと思ったんですけど、ホームページ見たらあまりにも表に製品を出していなくて、『これは検索に引っかからないわ』と思いました」と上田さん。

 インターネットの検索サイトがアクセス数重視になっていたり、長く更新されていないと検索結果に出てこなかったりといった現状のネットの限界が図らずも露呈した形ではあるけれど、結局、足で稼ぐ方が確実というのは、昔も今も、あまり変わっていないということだろう。とにかく、そういう偶然が重なって、上田さんは三機コンシスの発熱する布、HOTOPIAと出会うことになったのだ。

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