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冷えた肉まんを入れておくだけで“熱々”に 電子レンジみたいな布バッグ「HO-ON」の革新性分かりにくいけれど面白いモノたち(5/6 ページ)

» 2024年03月23日 12時07分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「ヒーターのサイズや、周りの断熱の効果によって温度の上がり具合は違ってきます。なので、できる限り高い温度を出したいけど、やけどしないギリギリの温度を探りました。みんなで毎日毎日実験して、空炊きした時に150度までっていうあたりで、ここが基準だろうなみたいなところを見つけたんです。それで、ひとまず、このスペックでいこうと決めました。サイズも最初は、ヒーターのサイズを12cmくらいの正方形にしていたので、それに合わせた内寸にしていたのですが、これじゃモノが入らないよねということで、じゃあ、これで何を温めたいのか、というところから考えました」と上田さん。

「HO-ON」で温めた肉まんを食べているイメージカット。個人的にも肉まんにぴったりの製品だと思っている

 話をうかがっていると、徹底的に「使う人」目線での製品作りが行われていることが分かる。男性の意見は一切入れないと決めた木村さんの判断は、こういうところに生きていると感じる。そうして、ペットボトルは保温したいよね、というあたりからサイズが決められていった。あえてマチを作らなかったのも、中に入れたものと布の間に空間をつくらないようにするためなのだ。

 「マチを作るかどうかは、かなりもめました。マチがあった方がお弁当なんかは入れやすいんですけど、そこはある程度大きさに余裕を持たせれば入るので。それよりも内部の熱のこもりやすさや、モノとの空間を減らす方を取って、マチ無しにしたんです」と上田さん。

 この「HO-ON」が面白いのは、電源を入れなければ単なる保冷・保温バッグとして使えること。内側に熱がこもりやすい構造と優秀な断熱材の合わせ技は、例えば、お弁当なども冷やした状態で持ち歩き、食べる時に加熱するといったことを、このバッグ一つで行えるということなのだ。冷蔵庫に電子レンジがくっついた的な(言い過ぎですね)。

専用バッテリーにはマグネットの電極が付いていて、これを背面ポケットにある接点とくっつける。バッグの中にも一切ケーブルが無いというのが、この製品のすごさを物語る

 そして、普通のバッグでもあるというのが、この製品の特徴。機能的には電子機器なのだけど、バッグ自体にはバッテリーとの接点になるマグネット以外、電化製品的なパーツはどこにもない。バッテリーとバッグをつなぐ部分にケーブルを使わなかったのも、ケーブルの断線による故障を避けるためだ。マグネットによる接点からもケーブルは出ていなくて、繊維に直結なので、断線による故障が起こらない。内部でヒーターが破れたとしても問題ないというのは、実用品として素晴らしい。

こちらはストラップ着脱式で、折り畳むこともできるし、ファスナーを開いて平らにすれば、座布団やひざ掛けのようにも使えるWILLCOOKの第2弾製品「WILLCOOK TREK」(2万3000円、バッテリー別売)

 ショルダーストラップが直付けなのも、普通のバッグであるということを強調している。本当に細かいところまで考えられている製品で、21年の春頃に企画が立ち上がって、製品ができたのは22年10月と、開発に時間がかかっているだけのことはあるのだ。

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