「最初に聞いた時は、そんなことしてもいいの? と思いました」。INSTAXシリーズの開発を担当している橋口昭浩さん(イメージングソリューション開発センター・シニアエキスパート)は、当時をこう振り返った。
「実際、私が、テスト機の設計を始めた時も、周囲の開発メンバーは『本当にやるの?』みたいな感じでした。そもそも、チェキフィルムの画像の品質を大切にして開発してきたので、わざわざ光を被らせるようなものを作ってもいいのかと心配だったんです」(橋口さん)
実際に撮ってみると分かるのだが、自分で押したシャッターから入る光とは別に、LEDの光が被るわけで、仕上がりが読めない。実際に出てきた写真を見ても、それが写真として正解なのかどうかが最初は全く分からなかった。普通に見れば、それは露出オーバーの写真だったり、部分的に白く飛んでしまっている写真だったりするのだ。
「製品化していく中で、この写真はいいのか、悪いのか、どこで良し悪しの線を引くのか、というのがすごく難しくて。わざわざ光を被らせた場合の品質基準などありませんので、何万枚もいろいろな条件で撮影して、試行錯誤しながら基準を作っていきました。また、色によっても光の強弱があるので、色ごとの作り込みなど非常に大変でした」(橋口さん)
これは、夜に並木とその奥の街灯の光を「SM(ソフトマゼンダ)」で撮影したもの。一見、何が写っているかよく分からないが、じっくり見ていると、街灯の光周りのグラデーションや、左手前にうっすら見える木の枝、上下の暗くなっていく感じなどが、味わい深いような気になってくる。こんな写真、意図しては撮れないし、スマホで撮っていたら即消していると思う実際、それぞれのモードで撮影してみると、同じ「カラーエフェクトコントロール」でも、それぞれの設定ごとに、狙っている効果が違うことが分かる。決して、写真に色を重ねることが目的ではなく、色の付いた光を被せた時に、その色の光である意味がある写真になるように、色ごとに細かく調整されているように感じた。光の特徴の生かし方を、色によって変えてあるのだ。
例えば、青い光が被る「LB(ライトブルー)」や、緑の光が被る「FG(フェーデッドグリーン)」では、露出はあまりオーバーにならず、さらに明るいところにも色はあまりハッキリとは付かずに、暗いところが青や緑よりの黒になり、明るいところも雰囲気が青や緑の感じになって、全体に、しっとりと深みのある写真に仕上がる。
逆に、赤や黄色系の「SM(ソフトマゼンダ)」や、「SP(セピア)」では、かなり光が強めに被るので、被写体が飛んでしまうことも多い。その代わり、意識しては絶対に撮れない写真が撮れてしまう面白さがあるのだ。この、なんとなくちゃんとした写真が撮れるというところでは満足していない、言ってしまえば過激とも思えるセッティングが、「mini 99」の最も面白い点だと感じる。
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