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セキュリティベンダーに聞く「スタートアップに投資するとき、どこを見る?」 技術理解の重要度はVCに聞く「投資したい・したくないテックスタートアップ」(2/2 ページ)

» 2024年05月07日 13時30分 公開
[吉川大貴ITmedia]
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セキュリティ重視? 投資先選定の考え方

──まずはざっくりと、投資先選定において重視している点を教えてください

永留副社長:実は、B2BかつARR1億円を超え、(シナジーや支援の一環として)HENNGEの販路でも代販できる、という条件が全て満たされる会社は結構少ないんですよね。その時点で「良いな」と思います。

 選んでいる場合ではないというか、むしろわれわれが積極的に探しに行っている状況。投資に当たっては投資する側の立場が上だ、という見方になりやすいが、われわれはそうではなくて、対等な関係という感覚で動いています。 

──具体的にどのようなシナジーを見込んでいるのか教えてください

永留副社長:われわれの顧客にスタートアップの製品を提案できるか考えています。エンタープライズの情報システム部門担当者の方にある程度検討してもらえるような商材だと、一番シナジーが見込めるかもしれません。

──事業の領域については

永留副社長:一番はセキュリティですね。エンタープライズ向けのセキュリティを狙うスタートアップは本当に少ない。

──クラウドセキュリティやメールセキュリティなど、セキュリティにもカテゴリーがさまざまにありますが

永留副社長:その辺りは問いません。HENNGEが得意な分野も、逆に手を付けていない分野も幅広く手を付けていければと思います。提供形態はSaaSが基本と思いますが。

──対象の業種などは

永留副社長:HENNGEが手掛ける「HENNGE One」がホリゾンタル(業種を問わない)なサービスで、建設や小売などさまざまな顧客がいるので、同じくバーティカル(業種特化)よりはホリゾンタルな方がいいですね。

──エンタープライズ向けのセキュリティは、大手を中心に競合の多い分野ではと思いますが

永留副社長:シード・アーリー・シリーズAの手前ぐらいであれば、これからどんどん製品もレベルアップしていけますし、ピボットもできます。自分たちの強みが生かせる市場をいかに見つけて、そこに向けてどう変化していけるかを期待しています。個人的には、特許を持ってるかどうかなどもあまり気にしていません。

──その中でも数値指標などは気にされていると思いますが、財務指標などで確認する点は

永留副社長:ARRは一番分かりやすいところです。あとはARPA(アカウント当たりの平均売上)ですね。

 HENNGEはSLG(営業主導)でエンタープライズに商品を提案してきたので、同じくSLGで成長するスタートアップを模索しています。SLGの場合、提案単価が低いと営業の工数がペイしません。SLGなのにARPAが低いとビジネスとしては厳しいので、そこは見ています。

──創業者を見るポイントは

永留副社長:製品やテクノロジーに対してに思い入れがあって、顧客のペインを解消しに行く気持ちがあるか見ています。一方であまり経歴は見ていません。

──創業者以外に、組織を見るポイントは

永留副社長:ITエンジニアは重視しています。CTOが優秀か、そうでなくともCEOが技術やその重要度を理解しているかは非常に大事です。技術を軽視している会社はNGになるかもしれません。

 具体的には、製品をちゃんと内製しているかですね。例えばですが、ベトナムに丸投げしてます、といわれると厳しいかもしれません。当社は小椋一宏社長がCTOも兼任しているので、必ずスタートアップのCTOをチェックしています。

──今の話はエンジニアの質の話題と思いますが、数については

永留副社長:エンジニアは、平凡な人材が100人いるより天才プログラマーが1人いた方が良い世界だと思います。特にスタートアップは人数が多いのはいいが、それだけで進捗は出ていないこともよくあると思うので、少数精鋭チームの方がいいのでは、という印象があります。

──エンジニア以外で気にする人材は

永留副社長:個人的にセールスのマネジャーは見たいですね。エンタープライズ向けであることやARPAを重視するので、SMB志向のリーダーだと難しいかもしれません。

 シナジーを重視するので、アライアンスを踏まえた思考かどうかも大事です。パートナーに頼らず全部直販する志向の方もいますが、日本のエンタープライズ市場ではやはりパートナー施策が重要と思います。なので、その辺りを抑えているかどうか、もしくはわれわれのアドバイスから理解してくれるかどうかは見ますね。

──逆に、投資に後ろ向きになる要素は

永留副社長:やたら風呂敷を広げすぎる起業家はちょっと引いてしまうかもしれません。エコシステムの中でいかに存在感を高めるかが日本のエンタープライズ市場やIT市場においては重要と思うので、そのあたりが考えられていないと難しいかもしれません。

 根拠のないグローバル志向も同様ですね。法規制の違いなどもあって、グローバルに向く製品とそうでない製品があるので、そのあたりも見ています。

──スタートアップとはどのような場所で出会うのでしょうか

永留副社長:ピッチイベントに登壇した起業家の方と話したり、連携しているベンチャーキャピタルからの紹介を受けたりします。

 他にも面白いパターンがあって、われわれが利用を検討していたツールの提供元に出資したこともあります。kickflowなどがそれに当たりますね。

──セキュリティとスタートアップを巡っては、先日M&Aされたばかりの企業が大規模なインシデントを起こし、親会社も対応に追われる事態がありましたが

永留副社長:われわれとしても非常に怖いなと。投資したり、M&Aした会社のセキュリティが甘くて問題になるのはあってはいけないことだと思いますし、これまで行っていたCTOチェックなど技術を重視した考え方も間違いではなかったと思いました。

──いわゆる“SaaSバブルの崩壊”や生成AIの勃興など、現状はスタートアップ業界が大きく動いているところだと思います。一連の動向について、何か思うところがあれば教えてください

永留副社長:“本物が評価される時代”になったなと。SaaSの株価がすごく高騰した時代はスタートアップももてはやされていて、SaaSというだけで資金が集まって、利益が出るか分からないけど投資することが許されていました。

 一方で、今はそれが許されず、本物だけが許される時代になってきたので、ある健全になってきたかと思います。顧客もあまりメリットのないプロダクトの導入を検討しなくて良くなりましたし、起業家も「あるとよいプロダクト」ではなく「なくてはならないプロダクト」を作るようになりました。われわれとしても、しっかり顧客の方を向いたプロダクトが出てくることに期待をしています。

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