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“ほぼ同じ”なのに2機種投入 業界人待望、ソニーの新作カムコーダーに見る「現場の変化」とは小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(4/4 ページ)

» 2024年09月21日 10時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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逆転する放送用と業務用のポイント

 発売時には非対応で、Z200のみ25年6月以降にソフトウェアアップデートで対応予定なのが、XAVC(MXF)記録と、59.94i記録である。

 XAVC(MXF)対応は、FXシリーズの上位モデルと互換性を持たせるためだろう。もともと24pでも撮れるので、FX6のちょっと下、FX3のちょっと上ぐらいのポジションに収まる事になる。

 59.94i記録は、テレビ向けのフィーチャーだ。現時点でインターレースが必要なのは地上波しかなく、長回しが必要なロケカメラやディレクターカメラとしての用途を強化するということだろう。

 ただ、実際に59.94iというフォーマットは、今後も制作運用上有利なのかは疑問が残る。地上波放送システム自体は、今後4K化するなど大きな変革がない限り変わらないと思うが、すでにほとんどのテレビモニターが液晶やOLEDになってしまった現状では、インターレースをそのままモニターできない。

 また多くの一眼系カメラはAVCHDをサポートしておらず、プログレッシブでしか撮影できないものが増えている。ドローンもしかりだ。当然編集用のノンリニアシステムでもインターレースの状況をモニターできないので、もはやインターレースにこだわって撮影する意味がない。むしろ60コマなのか30コマなのか24コマなのか、フレームレート混在のほうが問題だ。

 最近ロケ番組を見ていてびっくりしたことがある。低予算でカメラ数を稼ぐということもあるのか、最近はロケ中のタレントにGoProなどのアクションカメラを持たせるケースが増えている。それはまあ仕方がないとして、ある番組を見ていたら、カメラマン側の映像が30コマで、タレントが回すアクションカメラが60コマになっていた。

 普通は、逆ではないだろうか。カメラマンが回すのが放送規格の60コマ(59.94i)で、タレントに持たせるカメラはあくまでもオプションなので、30コマで仕方がないというのが、普通の感覚だと思っていた。カメラマン側のカメラはシネマ風に、タレントカメラはドキュメンタリー風にという、あえての狙いなのだろうか。狙ってやっているならいいが、気にしてないなら、それはそれでマズいように思う。

 もう1つ驚いたのが、ローカル局の旅番組である。ローカルタレントにGoProを持たせるのはいつものパターンだが、ふとガラス窓に反射で映り込んだメインカメラを見て驚いた。なんとシングルハンドジンバルに載せたスマートフォンだったのである。

 ディレクターとタレントのみの小規模な撮影なのかもしれないが、もはやYouTuberのほうが立派な撮影機材を持っている。逆に地上波の番組ロケはここまでダウングレードしていいのかと、妙なところで感心した。

 59.94iは、放送用にSDIで引き回して、スイッチャーなどのシステムに接続する際には必須である。その一方で、収録フォーマットとしては今後も必須といえるのかは、疑問が残る。確かに30P程度のビットレートで60コマの映像が撮れるという点では、コスパのいいフォーマットではあるが、すでにメインカメラを30Pで撮影し始めている現状では、そのメリットも薄れつつある。

 もともとテレビ放送では、映画やアニメは24コマを2-3プルダウンで59.94iにしただけだし、CMの多くは伝統的に30コマで放送してきた。最終的に59.94iに変換すれば何でもいいわけである。

 Z200とNX800は、SDI出力の有無が決定的な違いとなる一方で、価格差が15万円ある。これまでNXCAMはAVCHDベースの民生機出身ということで、放送用に使うには気後れ感もあったかもしれないが、XAVC SやXAVC HDなら全然問題ないのではないか。むしろネット中継をやっている業務ユーザーのほうが、SDI出力できるZ200に魅力を感じるだろう。

 もはやテレビ放送機材は、生中継以外はコスパのよいプログレッシブ運用のほうが合理的と言えるかもしれない。

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