NStock宮田代表:(宮田代表が起業した)SmartHRは年末調整などをデジタル化する会社ですが、年末調整に限らず人事向けの仕事全般を扱っています。当時、ベンチャーキャピタルから「年末調整がデジタル化されたらSmartHRは困るのではないか、大丈夫か」とよく言われました。しかし、この9年間、残念ながら年末調整のデジタル化は進んでいません。
先日、河野大臣が年末調整を全部廃止して確定申告に寄せるとおっしゃっていただきました。私たちにとってはある意味、飯の種が一部なくなるように見えるかもしれません。しかし、基本的には行政手続きのデジタル化は私たちの会社のミッションにとってはすごくプラスなので、ぜひこれを推し進めていっていただきたいと思っています。
河野氏:ありがとうございます。年末調整を廃止するというところだけがメディアに取り上げられていますが、それは完全に副産物です。本当にやりたかったのは、コロナの時に誰が困っているのかを行政が把握できなかったことです。
政府が持っているのは前の年の確定申告の数字だけで、現在どうなっているかというリアルタイムの情報がありません。一方、英国ではそれがリアルタイムに政府に取れるのです。なぜかというと、給料を払うとその情報を英国の国税庁にデータで提出するシステムになっているからです。
これを日本でも実現したいのですが、デジタル庁対国税庁で熾烈な攻防になっています。給料を払ったら、その源泉徴収と社会保険料のデータをそろえて政府の窓口に提出してもらい、そこから税務署や市町村、年金機構などにデータで受け渡しをしていくのです。
その数字を見ていて、一気に収入が下がっているところがあれば、何か起きていると判断してフラグを立て、確認に行きます。本当に困っているのであれば、行政側から「お困りでしたら、こういう支援がありますよ」とか、「支援金を振り込みました」といったことを、プッシュ型で支援できるようにしたいのです。そのためにデジタルデータを集めようとしています。
そうすると、デジタルデータが全部集まっているので、それをe-taxに入力していけば、1年分の収入、源泉徴収、保険料、それに医療費控除、保険料控除などを加えて「あなたの還付金はいくらです」という計算が自動的にできます。雑所得の経費だけは自分で入れる必要があると思いますが、それ以外は全て自動計算されます。それを見てOKならOKボタンを押せば確定申告が完了します。そうなれば、年末調整も必要なくなるだろうというわけです。
メディアはそこだけを取り上げて「年末調整廃止」と報道し、私はボコボコに批判されましたが、「いや、確定申告の行列が長くなる」という指摘に対しては、「行列はしません。デジタルでやるんです」と説明しています。
これをやることで、困っている人が本当にリアルタイムで分かるようになり、行政から支援ができるようになります。シングルマザーの方々と話をしていると、2つ3つ仕事を掛け持ちしていて、子供の面倒も見なければならず、区や東京都がどんな支援をしているのか検索する余裕さえないという状況が分かりました。そのため、本当に困っている人が実は支援の対象になっていないというケースがあったのです。
これはやはり行政側からプッシュ型で探しに行って支援を提供しなければいけないと考えています。おそらく、そこをデジタル化することで、さまざまな新しいビジネスチャンスも生まれてくるのではないかと思います。
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