来場者:2024年に医師の働き方改革が始まったり、地方では人手不足が顕著になってきたりしていることから、病院のDXへのニーズもかなり高まってきています。一方で、実際に取り組もうとすると、現在、病院の9割くらいがオンプレミスで、インターネットに接続されていない環境なので、やろうと思ってもできないという状況があります。
また、電子カルテベンダーがそこをサポートしているので、新しいシステムを導入しようとすると、数百万から場合によっては数千万円かかってしまい、病院側がためらってしまうということがあります。そのため、病院のDXは「やりたいけどできない」という状況が多く、スタートアップとしてもそこを乗り越えるのが難しいと感じています。
河野氏:医療分野のDXはかなり遅れている印象があり、これをなんとかしなければいけないと思っています。しかし、先日のランサムウェア攻撃で病院がいくつか被害を受けたことで、少し過敏になっている部分があります。「インターネットに接続したら危険なのではないか」という懸念があるのです。
かといって、オンプレミスで接続しないというのは、自治体の基幹システムのような状況になってしまいます。ここを安全にできる、あるいは何かあっても必ずバックアップで戻せるという技術的な安心感を醸成することが一つの課題です。
また、現在デジタル庁でミニマムの電子カルテを作ろうとしています。それをさまざまなベンダーに組み込んでもらい、そこだけは乗り換えができるようなことを目指しています。そうすれば、ある程度の相互運用性が確保できるのではないかと考えています。
もう一つの課題は、ベンダーごとに電子カルテのフォーマットが異なることです。これについては、東京大学の松尾豊教授(国内AI研究の第一人者)が興味深い提案をしてくれました。彼は「ChatGPTのような大規模言語モデルは、こういった異なるフォーマットの統一が得意なんです」と言って、3社ほどの電子カルテの記載をChatGPTに統一するよう指示したところ、瞬時に統一されたフォーマットが出てきたのです。
これを受けて、厚労省が補正予算をつけて、この取り組みをさらに推し進めようとしています。このように、医療DXができるところは後押ししていきたいと考えています。
澤山氏:河野さんから起業家に対して一言いただいて締めたいと思います。
河野氏:デジタル大臣を2年間務めさせていただいて、さまざまな海外のスタートアップやVC、ファンドと話をする機会がありました。彼らが共通して言うのは、日本のスタートアップについてです。
日本のスタートアップは、最初に日本市場を席巻した後で、グローバルに出ていこうとする傾向があります。しかし、日本市場は外から見てもユニークです。日本市場を取った後で、そのサービスやプロダクトで世界に行こうとしても、もう一度チューニングしなければならない。
だから、日本のスタートアップにも最初からグローバルに出てきてほしい。そうすれば、日本市場もその中の一つとしてカバーできるはずです。
私はあちこちで言って、AKBのファンにボコボコにされているのですが、AKBとBTSは同じくらい努力したと思います。しかし、こちら(AKB)は1億2000万人を相手にし、あちら(BTS)は70億人を相手にしました。結果が違うのは当然です。
だからこそ、最初からグローバルを視野に入れてさまざまな取り組みを行い、どんどんユニコーン企業に成長してもらえるとうれしいです。そうすれば、政府も税収が入ってきて喜びます。ぜひそこは頑張っていただきたいと思います。
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