少し前に、EVのバッテリーに関するXのあるポストが話題になりました。投稿自体は、2023年7月のものですが、炎上したEVのバッテリーを検証する様子の動画です。バッテリーケースの中に焼け焦げた円筒形の充電池がたくさん並んでいます。投稿者は、「2Aの充電式バッテリーだった」として、EVに民生用の充電池を流用していると揶揄しています。「2A」が、2アンペアを指すのか、AA=単三電池を指すのかわかりせん。
その投稿をリポストした日本語の投稿にも多くのコメントが寄せられ、その中に「ン百万円もするEVのバッテリーがこれではお粗末」「乾電池使ってんのかよ(笑)」といった発言も見受けられました。筆者も含め人々のこのような反応に驚いたTeslaユーザーは多いのではないでしょうか。
というのは、初期の量産型のモデルにおいて、電動工具やノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「18650」と呼ぶリチウムイオンタイプの充電池が搭載されていることは、Teslaユーザーの間では比較的有名な逸話です。
Teslaが採用した「18650」充電池は、パナソニックと共同で開発されたもの。円筒形のその形状は、一見乾電池に見えることは確かですが、蓄えられるエネルギー量でいえば乾電池などの比ではありません。これを約7200本(ウォルター・アイザックソン著、『イーロン・マスク』より)用い、バッテリーパック化し床下に搭載しています。
その後のModel 3には、直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ、少し太く、長くなったEV向け円筒形セルを採用していますし、最新のモデルの中には、直径46mm×長さ80mmの「4680」セルを採用したものもあります。2022年2月のパナソニックのニュースリリースによるとパナソニックエナジーの和歌山工場で「4680」セルを生産するとしています。
TeslaやEVに興味のない人からすると、焼け焦げた円筒形の物体を見た瞬間に「乾電池」や「エネループ」を連想するでしょうし、たくさんの円筒形のセルがバッテリーパックに収納されクルマの床下に設置されていることなど想像もつかないのかもしれません。「誤解するのも、しょうがないよね」と思いつつ、このような、下調べ抜きの瞬発的ポストを他山の石として自分自身の情報発信行動を戒めたいと思った出来事でした。
著者プロフィール
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
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