――懸垂幕やのぼりなど、盛り上がりには欠かせない販促物ですが、その費用がどうなっているのかも気になります
加藤:部材費以上に基本的に料率ベースでお支払いすることになる権利料がネックになりますよね。自治体の予算でそういった費用を捻出するのは非常にハードルが高く、そこを解決してくれたのがJR東海さんでした。もちろん市でも予算を確保して取り組んでいますが、「お互いのもつ資源や得意技を出し合って最適解を探っていきましょう」ということで、コンテンツタウン構想についての連携協定を結ぶことができたのです。これは豊橋が舞台となったマケインに限らず、JR東海さんの「推し旅」企画のもと、さまざまなコンテンツで街を盛り上げようという狙いがあります。
コラボの際は、「駅前・街を作品で染め上げたい」ということで、地域の事情に通じた私たちが豊橋の街のどこなら、JR東海さんが権利処理のうえ用意いただいたフラッグやポスターを掲示することができるかを市役所内の各部署にも確認しつつ調査し、その場所のオーナーさんたちに許可を得る、ということをやっています。オーナーさんも地域のためになるならと快くOKしてくれました。
――なるほど、JR東海としては自分たちではリーチしづらい駅の外までコラボが拡がることで、より鉄道利用の促進につながる。自治体としては事業者の販促費で機動的にコンテンツ露出=にぎわいを創出できるというわけですね。さらには特定の作品の人気に頼らず、持続・自走も視野に入れての取り組みでもあると
加藤:その通りだと思います。さまざまなコンテンツとのコラボによってお土産などが売れることが、地元事業者の皆さんに実感してもらえれば、今度は自らそういった取り組みを行おうという機運が高まることにも期待しています。9月29日からはフィルムコミッションが中心となった「豊橋まちあるきスタンプ」がはじまりましたが、まさに地元の皆さんに実感していただきたいという狙いがあります。そして、ゆくゆくは「マケインの街、豊橋」のみならず「コンテンツの街、豊橋」にしていきたいという思いを持って取り組んでいるところです。
こういった展開を可能にした「推し旅」についてはぜひ福井さんにもお話を聞いていただくとして、私も含めフィルムコミッション前事務局長の鈴木恵子さんに感化された関係者は多いはずです。
――マケインのエンドクレジットにもお名前があり、A-1 Picturesとの窓口となっておられた方ですね。残念ながら昨年お亡くなりになったとうかがいました
加藤:「Noと言わないフィルムコミッション」という標語を掲げ、ロケ誘致にとどまらず、その熱量を街づくりにまで拡げようと努力されていた方です。舞台となった学校でも何度も、かなり細部に至る取材があったと聞いていますが、それを実現したのも鈴木さんの調整のたまもので、作品のクオリティーにも良い影響があったと伺っています。行政はあくまで黒子に徹するべきと思っていますが、私自身もこれからも「恵子イズム」を受け継いでいくつもりです。
舞台となった地域の盛り上がりを創出するには、作品の力だけでなく、人手もおカネも必要となる。送客によって直接の利益があり必要なコストを負担したJR東海、鈴木恵子氏が中心となりロケを通じて制作チームとの信頼関係を築いたフィルムコミッション、結果的に両者をつないだ自治体の3者の歯車が噛み合ったのがマケイン×豊橋だ。後編では、フィルムコミッションやJR東海の立役者がどう動いたのかを聞いていく。
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