AI生成の最初のステップとして、映像の続きを作るという機能が最初にフィーチャーされたわけだが、これは比較的実現可能性が高いからという理由だろう。
その一方で、この機能がどれぐらい有用なのかという点では、評価が分かれるところだ。筆者が40年に及ぶ映像編集者生活において、本当にカットの長さが少し足りなくて困ったという経験がどれぐらいあるのかと言えば、実際にはそうした機会はほとんどない。足りないのがあと数フレームであれば、分からないぐらいの速度でスピードダウンするという方法も使えるわけで、既存の技術でどうにかしてきた。
1秒も2秒も足りないのであれば、それはそんなところでカメラを止めるヤツが悪いという話になる。撮影者も自分なのであれば自分を責めるしかないが、プロのカメラマンであれば、必要なカットの数秒前から数秒後まで、のりしろ部分やステカット部分まで含めて撮影するというのは、「基本のキ」である。
アクションカメラなど、途中でクラッシュして電源が落ちてしまった場合も考えられるが、そうした映像の価値は、本当にそうなった「真実性」にある。後半は生成AIですみたいなことがアリなコンテンツは、映画などフィクションの制作に限られる。
今後、映像編集にあったらいいなと思える生成AIは、通常撮影からハイスピード撮影したようなスローモーション生成だろう。実際、昨年のInter BEEでは、AWSがAIを使ってスーパースローモーションを作るというデモを行った。全ての映像がスーパースローにできるのならば、映像の世界は大きく変わる可能性がある。
現時点でもAI動画生成をコンテンツの中に使うにはまだ課題は多いところだが、存在しない絵を作る機能はそれほど求められていない。むしろ今ある映像の加工精度の向上や、手作業の軽減といったところが重要視される。見たことない絵を作ってくれるのはアマチュアは大喜びだが、動画のマスク切りやクロマキーのカラーマッチングを手伝ってくれた方がプロは助かるわけである。AIは絵なんか描いてないでオレの確定申告手伝ってくれ、みたいな話と似ている。
人がやって欲しいことをどう実現するか。そこがクリエイティブツールメーカーがAIを使う、一番の使命だろう。
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もう「テキストで動画編集」ができる時代に 試して分かったAIの進化っぷりCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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