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インスタントなのにサッと撮れない? 絵作りに熱中させる「instax WIDE Evo」の仕組みとこだわり、開発者に聞いた分かりにくいけれど面白いモノたち(2/7 ページ)

» 2025年02月28日 08時14分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 恐ろしいのは、その全てを撮影前に決定してからシャッターを切るという撮影フロー。正に、絵作りと一回性を徹底したカメラなのだ。使っていると、写真を撮るというより、絵を描いている感覚に近くなってくる。

右のダイヤルでフィルムエフェクトを、左のダイヤルでレンズエフェクトを選択する。ダイヤルのクリック感、画面でのエフェクトの切り替わりと、ダイヤル操作のシンクロ具合など、アナログ的な操作感を感じられるインタフェース

 「スマートフォンの普及のおかげで写真撮影の技術という部分も結構広がっていったと思います。自分でももちろんスマホで写真を撮りますけど、結構効率的に、ある意味メモ代わりにするぐらいの感じで撮った中に、1枚ぐらいいいのがあればいいやっていう。そのような、ショットの簡便性というか、何も考えずにシャッターを押す行為が自然になってる中で、時間をかけて撮るプロセスとか、操作することの面白さというところに焦点を当てた写真の楽しみ方に思い切って振ってみようかという話を、みんなでして、商品企画を進めました」と高井さん。

 つまり、このカメラの「サッと撮ることが難しい」という側面は、あえての選択だったということ。もちろん、シャッターを押せば撮れるのだけど、上手いことに、このカメラは前の設定が電源を切っても引き継がれる。なので、とっさにシャッターを切ると、前に撮ったエフェクトがそのまま適用される。

 それはそれで面白い写真にはなるのだけれど、もっと面白い写真が撮れたのに、という感じにはなる。前の設定を消してノーマル状態に戻すリセットボタンが付いているので、普通に撮りたい時は、このボタンを押してからシャッターを切れば、エフェクトが掛からない普通のチェキの写真が撮れるけれど、その写真が欲しいなら、わざわざこのカメラを選ぶ意味もない。

これは筆者の作例。ただ、自室を撮っただけだが、この一枚を撮るために、右ダイヤルで色味を決め、左ダイヤルでどういう写真にするかを考え、レンズ周りのダイヤルで度合いを調整した上で、ようやくシャッターを切ることになる。ある意味、気軽なスナップが撮れないカメラなのだ

「撮ったあとに、これがいいのか、あれがいいのかって、フィルターを掛けたり、スマートフォンでは、SNOWなどARで合成する楽しみ方もありますが、『instax mini Evo』でやりたかったのは、撮るときに自分の考えている内面のイメージをどう撮ればいいのか、被写体と向かい合いながら見つけていくっていうこと。だから、撮っている最中に、悩みながら考えてほしい。それを、今回、もっと深くやってもらいたいという思いがありました」と高井さん。

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