アナログ的なギミックはボディにもある。プリントしたい写真をモニターに表示してクランクダイヤルを回すと、画面内の写真が上に上がっていき、それに合わせるように、フィルムが排出されるのだ。
とても楽しいギミックなのだが、撮影したら自動的にフィルムが出てくるという、ポラロイドの「SX-70」以来のインスタントカメラの象徴ともいえる動作を、ここにきてマニュアルに戻してきたというのが、なんとも面白い。別にメニュー内にプリントボタンもあるので、必要ないようにも思えるのだ。
「大きなコンセプトとして、アナログ操作を楽しんでもらいたいというのがあります。ダイヤル操作などもそこから来たんですけど、クランクについては、フィルムから画像が出てくるまでの時間を楽しむギミックはどういうものだろう、というところから出てきたアイデアです。あれ、回しても、途中で止めて逆廻ししたら、画面上で表示が戻って、プリントされないんです。一定以上まで行っちゃうと出ちゃいますけど」と三浦さん。
「結局、instaxの最後の醍醐味というのは、プリントが出てきて、そこで終わりじゃなくて、そこからじわーっと写真が浮かび上がってくるまで続くんです。撮影からプリントまでのプロセスを、ひと続きの体験にしたかったんですよ。それを手触り感で実現しようとして、mini Evoでは巻き上げレバーのギミックを入れましたし、今回は、さらにこだわって、もっとじっくり楽しんでもらおうとしたわけです」と高井さんも続ける。
専用スマホアプリ「WIDE Evo」の主な機能は、リモート撮影とスマホに保存されている写真をWIDE Evoのプリンタで出力する「ダイレクトプリント」機能。スマホで撮った写真で、推しのチェキを自作することだってできる
このアプリの最大の魅力は、Discover Feed機能だ。云わば、instax WIDE Evo専用の写真SNSのようなものだが、投稿された写真に使われている設定をダウンロードしてカメラ本体に転送できるのだ話を聞いていると、チェキはプリントまでがひと続きの体験なのだということに、富士フイルムが強くこだわっていることが分かる。だから、スマホアプリとBluetoothで接続できるのにinstax WIDE Evoで撮った写真は、それだけではスマホに転送することができない。
ところが、1回でもプリントした写真は、スマホに送ることができるのだ。そしてその写真は、アプリ上で世界中のユーザーと共有できる。
つまり、プリントして初めて、写真として完結するという思想。「触れるもの、人にあげられるものがチェキだ」という価値観は、富士フイルムというより、ユーザーの声なのだという。だから、単に、本体のメモリに保存されているだけの画像データは、データであって写真ではないのだ。
その代わり、データが保存されているからチェキなのに焼き増しができる。スマホに送ったデータもプリントできるから、その意味ではスマホは、チェキの焼き増しマシンとして機能する。
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