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インスタントなのにサッと撮れない? 絵作りに熱中させる「instax WIDE Evo」の仕組みとこだわり、開発者に聞いた分かりにくいけれど面白いモノたち(5/7 ページ)

» 2025年02月28日 08時14分 公開
[納富廉邦ITmedia]

シャッターを切るまで時間がかかる理由

 instax WIDE Evoでの撮影は、まず、モニター画面を見ながらざっくりと構図を決めて、私の場合は、まず右ダイヤルでフィルムエフェクト、つまりベースになる色調を決め、続いて左ダイヤルでレンズエフェクト、つまり効果を決めてから、レンズ周りのダイヤルで、効果の度合いを決め、最後に改めて構図を確認したらシャッターを切るという手順になる。ここで面白いのは、最後に構図を調整すると、その微妙な構図の違いで、エフェクトの効果も違ってきて、もう一度設定し直すことになったり、思わぬ良い構図とエフェクトの組み合わせに出会ったりすること。ほんと、シャッターを切るまで時間がかかるのだけど、これが本当に楽しい。

「今回のエフェクトは、ベースになっているのは、mini Evoのフィルムエフェクトとレンズエフェクトになるのですが、よりフィルムライクを追求していくことで、彩度やコントラストを細かく調整して、よりアナログやフィルムの雰囲気を残して撮影できるように作っていきました」と三浦さん。実際、撮影したもの、特にプリントした写真を見ると、エフェクトがかなり光学的に見えるのだ。

 「もちろんこれはデジタルエフェクトですが、構想段階でレンズフィルターとかいろんなアナログなものを買い集めて、実際に試しながら、デジタルに落としていくみたいな形で進めていきました。やはりアナログな方に近づけたいんです。mini99で、本当にフィルム面に光を当てて『光漏れ』を実現したときは、我々も感動しましたよね。どれだけデジタルでアナログに近づけても、これは出来ない、アナログならではの表現なんだなっていうのがありました。やっぱりアナログの技術とデジタルの技術は違うというのはかなり実感しましたけどね。それでも、できる限り挑戦して、今回のモデルは、かなり近づいていると思っています」と高井さん。

レンズエフェクト「ビームフレア」を使った撮影。光の伸び具合や角度、色などは被写体の状況で変わるし、エフェクトの掛かり具合もフレキシブルにコントロールできる

 今回のエフェクトでいえば、企画担当の三浦さんは、「ビームフレア」が気に入っているという。「フィルムエフェクトが『ライトグリーン』で、レンズエフェクトが『ビームフレア』という組み合わせで撮ると、何というか、ノスタルジックな雰囲気が簡単に出やすいんです。パッと、本当に何気なく撮っても、すごく味のある雰囲気に仕上がるのでおすすめです。ビーム一つ一つの長さだったり、透過度だったり、それで全然見え方が変わってくるんです。それを細かく調整して、プリントしてみた時に違和感があるかないかみたいなのとか、『ビームフレア』はかなり凝って作っています」。

 実際、筆者も撮影して、一番、「うわっ、フィルムカメラみたい」と思ったのは、ビームフレアを使った写真だったから、この話には大きく頷いた。なんというか、ビームの流れが自然なのだ。それを掛かり具合の調整ダイヤルで撮影時に細かくコントロールできるのだから、撮るのに時間がかかるのも当然。

レンズエフェクト「二重露光」を使った写真。このように、二つの情景を意識的に、濃度までコントロールして撮影できるので、技術要らずで面白い写真が撮れてしまう。(フィルムエフェクトはライトグリーンで撮影)

 個人的にエフェクトで気に入っているのは、レンズエフェクトに入っている「二重露光」だ。これ、何が凄いといって、まず1枚撮影したあと、その撮影結果を透過画面のようにモニタに表示させながら、二重露光させる被写体の構図が決められる。

 ここまでは他のデジカメでも可能だが、さらにこのカメラでは、その二重露光の二つのレイヤー間の濃淡をコントロールできてしまうのだ。これだと、露出のコントロールが難しい二重露光写真も失敗なく撮れる。しかも、二重露光はレンズエフェクトだから、フィルムエフェクトで好きな色調に設定した上で、二重露光撮影が楽しめるのだ。

 これが本当に楽しくて、意味もなく二重露光が映える被写体を探してしまう。「二重露光に関しては、度合いを調整するダイヤルを付けたことが、上手くハマったと感じています」と三浦さん。

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