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“ガチキャンプ勢”だけでなく、“長期連泊勢”にも刺さる「深い製品」を投入するEcoFlow その狙いは小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2025年05月09日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 ポータブル電源大手の中国EcoFlowは4月24日、電源そのものではない製品として、ポータブルエアコン「EcoFlow WAVE 3」、ポータブル冷蔵庫「EcoFlow GLACIER Classic」を発表した。また車のオルタネータから電源を取る「EcoFlow 500W Alternator Charger」も発表した。

渋谷ストリーム稲荷橋広場にて新製品を発表する、EcoFlow危機管理対策本部長の長浜修氏

 これらの製品は、すでに先行商品がある。ポータブルエアコンはすでに3世代目だし、ポータブル冷蔵庫も「EcoFlow GLACIER」という製品が2023年6月に発売されていた。Alternator Chargerも、「800W Alternator Charger」という製品が先行している。

 2024年には、多くのメディアがキャンプブームの終焉を宣言した。コロナ禍の中、アウトドアであってもパーソナルスペースが確保できる遊びとしてソロキャンプが流行したが、それにはまらなかった人たちは、3密政策が終了すると以前からの趣味に戻ってしまった。

 一方でコロナ禍以前からキャンプを趣味としている人にとっては、キャンプ用品がたたき売りされたり中古市場が活況となる状況を喜んで受け入れ、装備の充実が図られた。その結果、多くのキャンパーは週末一泊といったライトなキャンプではなく、車中泊しながら数日を過ごすといった、ヘヴィな行動をとるようになっていったと考えられる。

 関東近郊のキャンプ場は、ゴールデンウィークから夏休み期間に繁忙期を迎える。ブーム時のようにサイトがぎゅうぎゅうで「どこがソロキャンプやねん」といった異常事態ではなく、常識的なスペースを確保した状態ですでに予約は埋まり、盛況であるという。

「Alternator Charger」の盛況から見えること

 個人的にはまず、Alternator Chargerの盛況ぶりに注目したい。

 「オルタネータ」とは、車のガソリンエンジンに接続されている発電機で、車のメインバッテリーを充電するのに使用される。このオルタネータの発電能力を利用して、ある意味電力を横取りするのがAlternator Chargerである。横取りした電気を使って、ポータブル電源を充電できる。

今回新登場した500WタイプのAlternator Charger

 EV車やハイブリッド車であれば車内からも大電力が取り出せるが、一般のガソリン車ではシガーソケットからの12〜24V程度に限られる。しかしAlternator Chargerを取り付ければ、500Wや800Wといった電力を取り出せることになる。

 またECOFLOWの独自機能として、「逆充電機能」がある。これはメインバッテリーが枯渇した際に、Alternator Chargerにつながっているポータブルバッテリーから電気を逆流させてメインバッテリーを充電する機能だ。ある意味メインバッテリーのバックアップともいえる使い方ができる。

実際に車に接続されたAlternator Charger

 Alternator Chargerは、ECOFLOWはもちろんとして、BLUETTI、DJIなど大型ポータブルバッテリーを製品化しているメーカーからはだいたい製品が出ている。市場としては500Wクラスの製品が主力で、ECOFLOWの800Wはやや大電力である。今回あえて小さめの500Wを投入したのは、人気クラスの価格帯に参入するということだろう。500Wモデルの公式サイト価格は6万6000円だが、現在は50%オフの3万3000円で販売されている。ちなみに800Wモデルは8万8000円であった。

 Alternator Charger自体の取り付けは、基本的には端子を車のバッテリーに並列につなぎ込むだけなので、マイナス側がアースだということを知っていて、電気に関する基本的な知識があれば、難しいものではない。

 難しいのは、そのケーブルを車内からどうやってエンジンルーム側に引き出すか、である。これは車体設計やエンジンの位置などによって、どこからどのように引き回せるかが変わってくる。

 普通車であれば、多くは助手席の足元に引き込みの穴があり、すでに通っているケーブルもあるので、そこを利用することになる。自分でオーディオアンプなどを取り付けたことがある人なら、よくご存じだろう。

 ただAlternator Charger用のケーブルは大容量の電力が通るために頑丈にシールドされており、かなり太い。穴のカバーに切れ目を入れたり、そこが通らなければ別の穴を開けたりといった加工が必要になる場合がある。

ケーブルはかなり太い

 また荷物室が大きなハイエースなどのバンタイプの車は、エンジンルームが前ではなく運転席や助手席の下にあったりするので、配線は車種によってだいぶ違ってくる。

どこからケーブルが通せるかは、車種による違いも大きい

 こうした車体加工になると、誰でも、というわけにはいかない。多くはディーラーや車体修理業者に依頼することになるだろう。ただ事業者によっては経験がないために断られたり、工賃として結構な額を請求されたりといったこともあるようだ。それが昨今では、「オルタネータチャージャー取り付け承ります」を売りにする事業者も出てきた。これは大きな変化だ。

 オルタネータチャージャーが必要になるのは、屋外でソーラーパネルを展開したぐらいでは追い付かないレベルの大容量バッテリーを充電する場合である。つまり従来のような、「キャンプ地に行ったらソーラーパネルを広げましょう、そこでコーヒーでも飲んでるうちにポータブル電源も充電もできますね」みたいな小規模なイメージではなくなった、ということだ。それだけガチ勢がメインになってきたということの裏付けでもある。

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