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“ガチキャンプ勢”だけでなく、“長期連泊勢”にも刺さる「深い製品」を投入するEcoFlow その狙いは小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2025年05月09日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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「ポータブル冷蔵庫」の盛況から見えること

 「EcoFlow GLACIER Classic」はポータブル冷蔵庫としては第2世代となるが、今回は35L/45L/55Lの3サイズのシリーズ展開となった。1台で冷蔵、冷凍に使い分けができるが、45Lと55Lは2室あるので、それぞれを冷蔵と冷凍に分けて設定できる。35Lは一室しかないので、冷蔵か冷凍かどちらかを選ぶことになる。

6月発売予定の「EcoFlow GLACIER Classic」

 前モデルは天面にディスプレイと製氷機の開け口があったので、要するにフタが2つあるような作りだったが、今回は天板全体が1枚でフルフラットになっている。これはこの上が調理台になったりテーブル代わりになるようにという配慮である。またこのフタは、前側からでも後ろ側からでも開くように改良された。シャープの冷蔵庫のような、「どっちもドア」のような構造と言えば分かるだろうか。

天板がフルフラットになって、調理台やテーブルとしても使えるようになった

 ポイントは、かなり低消費電力ということだ。専用の内蔵可能なバッテリーはそれほど大きくないが、35Lは最長43時間、45L/55Lは最長39時間使用できる。その他、ACやシガーソケット電源からでも駆動できるので、それらを組み合わせていけばかなりの長時間使用が可能だ。

バッテリーはそれほど大きくない

 冷蔵庫は当然食品を入れるものだが、これだけの連続稼働時間が必要ということは、当然朝買い出ししたものを夜食べるというレベルではない。1度の買い出しで数日間は食料の追加買い出しせずに連泊するというレベルのキャンプ、あるいは車中泊が想定される。

 重量は35Lモデルが20.5kg、45Lモデルが23.2kg、55Lモデルが25.2kgとなっている。仮に55Lモデルの中身を食材や飲料で満杯にしたら、総重量は80kg近くになるだろう。食材が入った状態で積み降ろしするには、大人4人ぐらいいないと難しい。

 こちらもECOFLOWの自社調査によれば、ポータブル冷蔵庫の利用者は67%が車中泊やキャンプでの利用であり、およそ3割が防災・非常時対応となっている。

「EcoFlow GLACIER」利用状況の調査結果(n=138)

 GLACIER Classicは、執筆時点ではまだ価格が発表されていない。前作のGLACIERはすでに販売終了のアナウンスが出ているが、容量38Lで13万1560円であった。Classicの45Lや55Lは、それよりも高くなる可能性が高い。そうなるとやはり価格的にも、相当なガチ勢向けということになる。

 ガソリン車のオルタネータから電源を取ってポータブル電源にチャージするというところから始まり、エアコンや冷蔵・冷凍庫も動かしていくという流れである。ポータブル製品なので一般の同種製品より値が張るが、いわゆるキャンピングカーでなくてもこれだけの装備があれば、長期連泊でも不自由なく過ごせるだろう。数百万かけてキャンピングカーを購入するより、今ある車で出掛けられると考えれば、逆にコスパがいいという考え方もできる。

 キャンプと車中泊はどちらもアウトドアに分類されるが、似ているようで微妙に違う。キャンプは特定の場所での屋外生活が目的だが、車中泊の場合は旅や長距離移動そのものが目的となるケースが多い。キャンプより車中泊の方が、長期化には向いている。

 この背景には、一時のキャンプブームによって各地にオートキャンプ場が整備されたことや、車中泊というものが世間に広く認知され、ハードルが下がったことがあるだろう。

 かつてのブームではターゲットが広く浅くだったのに対し、現在は狭く深くなっている。長期オートキャンプの本場はアメリカだが、でっかいキャンピングカーで家電も一通り積んでるみたいなスケール感なのに対し、バッテリー技術を応用し、コンパクトで深いターゲットに刺さるアウトドア製品は、日本の方が芽があるということだろう。

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