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なぜ「大人のやる気ペン」なら“続く”のか? 開発者に聞くその秘密 「データを使って煽るツールにはしたくなかった」分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

» 2025年05月28日 15時45分 公開
[納富廉邦ITmedia]

データをあおるだけのものとしては使わない

「仮にデータを細かく管理できるサービスを有料化して提供するとか、まだ足りていない部分を補うようにできるかもしれません。ただ、管理という部分を細かくできるようにする方がいいのかというと、それもまた違うという気もしていて、あえて足りなくしている部分もあるんです。データ管理を細かくできるようにするなら、今度は細かくできたことの意味が必要になります。その細かいデータがアウトプットとして何につながるかっていうことが大事だと思います。その出口まで作って初めてサービスになるかなと思ってるところです」

ホーム画面に表示される日ごとの「勉強タイム」グラフ

 このデータを、単にあおるだけのものとしては使いたくないという姿勢が根本にあるのは、このツールが、まずは勉強が苦手な子どもに向けて開発されたからというのがあるのだろう。そして、勉強が苦手な子どもと、仕事や生活に追われて、勉強する時間を取るのが難しい大人というのは、案外、行動様式に共通点があるのかもしれない。

 学生時代を振り返っても、何だか知らないけど勝手に勉強できる人というのはいて、そういう人はちゃんと遊んだりもしていて「やる気」なんて必要としていなかった。同様に、やる気にあふれている人や根性がある人も、モチベーションを上げる必要はないのだろう。

 私が、この製品を面白いと思う最大の理由は、それができない人ができるようになるための道具ではなく、できない人がそれでも何かを続けるための手伝いをする道具として作られていることなのだ。

「データが取れるからと何でも取り入れてしまうと、それはあおるためのツールになっちゃうんですよ。人によっては、そういうデータを見るとやる気がなくなることもあると思うんです。アプリのコミュニケーション機能を緩いつながり程度に抑えているのも、比較になってしまうのを避けたいからなんです。他人と関われると刺激になるというのも確かにあるとは思うのですが、そこに一歩踏み込むと、モヤモヤとした複雑な感情が渦巻いていたり。だから、取ったデータをどう皆さんに改めて価値として提供するか、という部分は慎重にならないといけないというのを、このチームの中で、今、感じているところですね」

 今回の製品について、最も考えて、こだわった部分というのが、こういうデータをどう扱って、あおるツールにならないようにするかといった部分だったと中井さん。だから、アプリのコミュニケーション機能の部分は、カード形式の自己紹介的なものにとどめてある。そうすることで、様々な形での勉強へのアプローチを知ってもらえれば、「勉強はこうであらねば」といった固定観念から開放される人もいるかもしれない。

 しゅくだいやる気ペンは、小学校低学年からのツールなので、基本的に鉛筆を使うことが前提でデバイスが作られていたけれど、大人のやる気ペンでは、ボールペンや万年筆などにも付けられるコンパクトなデバイスになっている。そうすることで、ハードウェアを付けているという負担を感じにくくすると同時に、自分の愛用の筆記具、勉強用の筆記具を使えるようになった。

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