多分、大人の勉強の一番の敵は、個人的な作業だからこそ生まれてしまう孤独感にあるのだけど、だからといって、あまりに踏み込まれるのは、それが例えアプリであってもうれしくはない。
「リサーチを進めるにつれて、すごく孤独に感じてるんだなということが分かってきました。でも、誰かと机を並べて勉強したりとか、そういうのでもないんだな、というのもよく分かってきて、そのあたりの孤独感みたいなところにどれだけ寄り添えるかが、開発の一つのテーマになっていきました。だから、勉強時間をめちゃくちゃ伸ばすといいことあるみたいにはしてないんですよね。地道に一歩一歩いていくと、別の形で地道に頑張っている人たちに出会っていくという、あえてシンプルな設計にしてあります」
そんな風に、勉強というもの自体が持つ多様性のようなものに向き合った設計のおかげで、大人のやる気ペンは、一日10分でもいいし、TOEICの勉強みたいなガッツリとやるのもいい、という製品になっている。それが、この製品の何よりの魅力だと思う。モチベーションの持続と、孤独感をほんの少し和らげてくれる距離感でのコミュニケーション。
中井さんは「アプリ内では、叱咤(しった)激励をしてくれるキャラクターが進捗に応じてコメントをするような仕掛けがあるのですが、ちゃんと欲しいところで褒めてくれて、叱るところはちゃんと叱るというバランスには、とにかく注意しました。とにかく、これを使うことで、行動が変わっていくような、そんなデータの使い方を考え続けるのが、ぼくらの仕事だと考えています」と話す。そして、この製品開発は、売ってからが面白いとも。アプリにデータがたまったり、フィードバックが寄せられたりすることで、分かってくることが次の製品に生かせるのだそうだ。
デバイスがあって、データを集められる環境が整った。実は、これからがこの「大人のやる気ペン」という製品の本領なのかもしれない。
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