撮影素材のクラウドへのアップロードは、理想を言えばBlackmagic Design製のカメラを使えば一気通貫だが、実際にはカメラの選択肢は多く、そういうわけにはいかない。
さらに言えば、そんなに急いで現場からクラウドに上げなければならないのは報道ぐらいである。実際には何らかの拠点に戻ってから、カメラのメモリーカードからアップロードすることになる。これにはPCを経由してもいいが、Blackmagic Cloud Podを使うと、これにメモリーカードリーダーを接続するだけで自動的にアップロードされる。
もちろん事前にアップロード先を設定しておく必要はあるが、素材共有するのであれば事前に他者にも共有場所を知らせておく必要があるので、こうした作業はすでに行われているはずだ。
カメラにプロキシを収録する能力がある場合は使った方がいいだろうが、プロキシ作成機能がないものもある。この場合はオリジナルファイルのみをアップロードすることになる。
クラウドに直接入って編集するなら、オリジナルファイルのフォーマットや解像度、ビットレートなどの条件によって、十分なレスポンスがえられない場合もある。しかしCloud Storeを間に挟むことで、勝手にクラウドの素材をローカルに落としてくる。つまりCloud Storeがクラウドのキャッシュとなるので、オリジナルファイルを直接扱っても十分なレスポンスが得られる。
ここで注意すべきは、クラウドとの同期方法だ。双方同期の場合、誤ってローカルの素材を消してしまうと、クラウド側も消えてしまう。そうなるとクラウドと同期している他者のCloud Storeからも連動して素材が消えてしまうことになる。よって編集者側は、クラウドからCloud Storeに一方的に同期するように設定しておく方がいいだろう。
編集に対する共有者からのアノテーションについては以前にもまとめているので、そちらを参考にしていただきたい。
さて編集が完成し、プロジェクトとして完了したら、その共有素材や中間素材、プロジェクトデータなどをバックアップし、クラウド上およびCloud Storeを次のプロジェクトに備えて空ける必要がある。
こうした用途に今年のNABで新しく登場したのが、「Blackmagic Cloud Backup 8」だ。これは価格的にこなれている大容量HDDを差し込むことで、ここにクラウド上のコラボレーションプロジェクトをバックアップする。
作りとしてはCloud Storeと同じだが、廉価で大容量のHDDを8台まで使えるというのがメリットだ。現在一般的に入手できるHDDの最大容量は22TBだと思われるが、これが8つで176TBとなる。
バックアップが完了したら、同期設定を削除しておく。こうすれば、ファイルはCloud Backup 8に残ったままで、クラウド上のファイルは削除できる。
Cloud Backup 8も一種のNASなので、DaVinci Resolveが動くマシンがネットワークに繋がっていれば、ここから素材を引き出して編集することもできる。
前述の長野朝日放送の例では、番組素材が4回(約1カ月)分で1TBとなっているので、およそ10年程度はバックアップできることになる。それ以上の長期保存の必要があればまた別の方法を考える必要はあるが、当面は運用できると思われる。
従来のクラウドソリューションは、クラウド上の素材に対してみんなでアクセスするというスタイルだが、ずっとクラウドに素材を置いておくのはセキュリティや秘密保持の関係でどうなのか、といった懸念もあった。だがクラウドはあくまでも中間のパイプとみなして、ローカルのNASに勝手に素材が降りてくる、基本はそれで作業、というスタイルは、テレビ番組制作など作業自体が時間に負われがちなコンテンツ制作では、素材喪失という致命的なミスを防ぐというメリットがある。
全部をクラウドで直接やるということに抵抗がある現場も、基本はローカルで、というこれまでのワークフローが継承できる点で、安心できるのではないだろうか。
【訂正:7月8日14時30分 「Disk Speed Test」の結果について補足を追記しました。また、初出時Cloud Padと表記しておりましたが、正しくはCloud Podでした。訂正してお詫び申し上げます。】
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