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泉大津市の“夢の燃料”実演、「ドリーム燃料」ではなかった サステイナブルエネルギー開発の見解(2/3 ページ)

» 2025年07月12日 16時33分 公開

疑問点2:45分間で20Lの軽油(C12H26と仮定)を生成するには、理論上約14kgの炭素が必要で、それを空気から得るには6万5000m3も吸い込む必要がある。それには巨大なファンを高速で動かさなければならないはずだが、それを行っているように見えない

(出典:サステイナブルエネルギー開発のWebサイト)

サステイナブルエネルギー開発の見解

 ご指摘の計算は、大気中(CO2濃度は約0.04%)から直接二酸化炭素を回収し、反応に供給することを前提としたものと理解しております。しかし今回の泉大津市実証では、反応条件の再現性と安全性を優先し、大気からの直接回収ではなく、高純度CO2を充填したシリンダーガスを炭素源として使用しました。

 20Lの軽油(C12H26を仮定)の合成に必要な炭素量に相当するCO2は、シリンダーから反応器へ制御流量で連続的に供給しているため、大容量送風機で大量の外気を高速吸引する工程そのものが存在しません。したがって、装置外観にファンが見当たらない点は仕様どおりであり、「約6.5万m3の空気吸引」を前提にしたご懸念は当てはまりません。

 なお将来的な商用プラントでは、内燃機関の排気ガスなどに含まれるCO2を炭素源として再利用するシステムの構築を検討していますが、今回のデモはあくまで「燃料合成プロセスと触媒挙動の検証」に特化したものです。


疑問点3:必要と推測される電力量に見合う太陽光パネルが使われているように見えない(仮に効率40%で生成→1800MJ≒500kWh電力必要、太陽光パネル45分間発電≒約3300m2必要)

サステイナブルエネルギー開発の見解

 ご懸念は、生成された軽油20L(化学エネルギー換算で約1800MJ、≒500kWh)と同等の電力を外部から投入すると仮定し、さらにその全量を太陽光パネル(発電効率40%と設定)だけで45分間に賄う前提で計算されたものと拝察いたします。しかし泉大津市実証で採用しているプロセスは、「熱エネルギーで反応物全体を高温高圧にする」従来型合成とは大きく異なり、紫外光×光触媒×ラジカル反応により常温常圧で進行させる点に特徴があります。

 反応のエネルギーバランスを模式的に示すと、まず油相中の炭化水素鎖とCO2を結合させるには、活性化エネルギーとして約80kJ/molの「上り坂」を越える必要があります。ここを「登るエネルギー源」が紫外光であり、当社装置では高効率UVライト(LED)を用いて電子を励起し、炭素を取り込むラジカルを生成しています。

 頂点を越えた後は結合形成に伴う発熱が約120kJ/mol発生し、差し引き40kJ/molが生成油に余剰エネルギーとして蓄えられる――いわば「光で坂を登り、下り坂のエネルギーは油の中に貯金される」仕組みです。したがって、外部から投入する電力量は「生成物の全熱量」ではなく、頂上までリフトで運ぶための最小限の光エネルギー+補助系統動力にとどまります。

 実証機(パイロット仕様)で測定した外部電力投入は、45分運転あたり約55kWhであり、太陽光パネルは一切使用しておりません。電力は装置に含まれるディーゼル発電機から供給しています。よって「約3300m2の太陽光パネルが必要」とするご試算は、本プロセスのエネルギー設計とは整合しません。

 今回のデモは 反応機構と触媒挙動の検証に特化しており、エネルギー自給型システムの実装は対象外です。


疑問点を再び聞いた

 ITmedia NEWS編集部では、サステイナブルエネルギー開発の回答を踏まえた上で、さらに疑問に感じた部分について再度問い合わせた。

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