回答の中で主張されている反応式は
CnH2n+2(液体)+CO2(気体)+H2O(液体?)+80kJ= Cn+1H2(n+1)+2(液体)+3/2 O2(気体)+120kJ
と読み取れます(新教育課程で熱化学方程式は廃止されていますが今回の例では説明しやすいので利用します)。熱の差し引きを整理すると
CnH2n+2(液体)+CO2(気体)+H2O(液体?)=Cn+1H2(n+1)+2(液体)+3/2 O2(気体)+40kJ
と変形できますが、これは「左から右へ反応を進めると40kJの発熱が起きる」ことを意味します。
一方で、右辺に酸素があり、左辺に二酸化炭素があることから分かるように、右から左への反応は明らかに燃焼です。燃焼反応となるように整理すると
Cn+1H2(n+1)+2(液体)+3/2 O2(気体)=CnH2n+2(液体)+CO2(気体)+H2O(液体?)-40kJ
となりますが、例えば炭素と酸素の単純な燃焼反応では
C(黒鉛)+O2(気体)=CO2(気体)+394kJ
となるように、燃焼時には熱が発生します(正確には吸熱が起きる反応もありますが、今回は燃料として使うのだから熱が出てくれないと困ります)。
しかし、上記の注目している反応では燃焼時にむしろ吸熱反応が起きることになってしまい、化学の常識であるエネルギー保存則に矛盾するように推察します。また、エネルギー差として40kJ程度で済むのかも個人的には疑問です。
これに対するサステイナブルエネルギー開発の回答は以下の通り。
ご提示の式はCO2が一挙に分解して分子状酸素(O2)が放出される単段反応を仮定されていますが、当社プロセスはそうではありません。CO2を段階的に還元し、生成途中で生じる中間体を油相の炭化水素鎖へ取り込む多段反応で進行します。この経路ではO2が系外に放出されず、酸素原子は最終的に水(H2O)または水酸基(OH-)として系内に留まるため、O=O結合(生成に約498kJmol-1を要する高エネルギー工程)は発生しません。――これが単純な「燃焼式」と熱収支が一致しない主な理由です。
理論計算によれば、各段階で生じる放熱を差し引いた正味の余剰エンタルピーは数十kJmol-1規模(推計値およそ40kJmol-1)にとどまります。これはあくまで理論値であり、現在進行中のパイロット試験で実測検証を行う予定です。
外部からのエネルギー投入は、紫外光源と補助動力を合わせて45分当たり約50kWhであり、生成燃料20Lが持つ全熱量(約500kWh)を電力で供給しているわけではありません。エネルギー保存則との整合性は、この前提を踏まえることで成立します。
なお、反応機構の詳細(中間体種・触媒設計など)は現在特許審査中につき、現段階では開示を差し控えさせていただきます。
なおも疑問は残るため、論文等がないか尋ねたところ、コア技術の特許出願中で、新規性を損なうおそれがあるため論文発表などは行っていないという。「ご指摘の疑問をすべて解消するには、触媒構造・中間体の反応経路・エネルギー収支の実測値といった未公開データを詳細に開示する必要があります。しかしながら、これらは今回出願中の特許請求範囲に深く関わる未公開の技術情報であり、現段階では開示できません」。
同社は公表が可能になり次第、検証データを含めて十分な情報を開示するとしている。
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