筑波大学は8月8日、「音のない重低音」を鳴らすサブウーファー(低音を強調して再生するスピーカー)を開発したと発表した。筋肉への電気刺激と低周波振動の技術を組み合わせて活用。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使った実証実験では、従来のスピーカーと同等のリズム・音の厚みを伝えながらも、周囲への騒音を大幅に抑えられることを確認した。
この研究では、筋肉への電気刺激を活用することで、深い低音による身体の振動を模倣。音を外部に出さずにライブのような臨場感ある音響体験を提供する「EMS 静音サブウーファー」システムを開発した。
このシステムでは、音楽信号から低周波や重低音のタイミングと振幅情報を持つ信号を生成。これを電気刺激の信号として変換し、腹部に貼付したパッドへ送信して、筋肉に対して低音の響きや打撃感を刺激として与える。
開発したシステムの評価実験には24人が参加。HMDとヘッドフォンを着用させて、(1)提案システム、(2)従来のスピーカーとサブウーファー、(3)振動デバイス(Hapbeat)、これら3つの条件下でVRライブ映像を流し、没入感やリズム精度などを7段階で評価してもらった。
結果、提案システムは従来の振動デバイスと同等かそれ以上の評価を獲得。使用回数を重ねることで評価が有意に上昇する「慣れ効果」も観察できた。研究チームは「騒音を抑えつつ、没入感やリズム認知で従来のスピーカーと同等の効果が得られ、音響没入体験の新たな可能性を示した」と説明している。
今後は、電気刺激信号と音響信号の知覚タイミング差を補正するキャリブレーション機能の強化や、音楽ジャンルに応じた電気刺激信号の最適化など、さらなる改善を施す。「将来的には、映画やゲーム、舞台芸術などの分野への応用はもちろん、自宅での音楽鑑賞やウェアラブル音響デバイスとしての製品展開も視野に、さらなる改良と最適化を進める」(研究チーム)
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