日本HPの販売パートナー向けカンファレンスで、不思議なデバイスが飛び出した。「ダース・ベイダーのヘルメットや富士山の模型、3Dスキャナーに見えると言われますが、違います」──日本HPでワークステーション製品を担当する杉浦慶太さんはそう説明する。
製品名は「HP Z Captis」。立体物から3Dデータを取得する3Dスキャナーではなく、素材の凹凸、例えば床や石畳、布、革製品などをデジタルデータに変換する「マテリアルスキャナー」だ。米国では2025年初頭に販売を始めており、日本でも近々、数百万円での販売を見込む。
この記事では、HP Z Captisの詳細や同カンファレンス(HP Partner Communication 2025、7月22日開催)の内容について見ていく。
HP Z Captisは山型の部分と土台を分けることが可能で、そうして中を見てみると構造がよく分かる。
山型のてっぺん内部にはカメラが1台設置されていて、なるほど多視点での立体データ取得ではない。カメラの周りには8方向から面で当てられるライトがある。これで、各方向から素材に光を当てて撮影することで、素材表面の質感データを得られるというわけだ。また土台側にもバックライトを備え、透過度も取得できる。
土台は着脱可。山型の部分だけでも、床や石畳などキャプチャしたい物の上に乗せて撮影すればデータは得られるという。バッテリーを内蔵し、NVIDIAのJetson AGX Xavierや2TBのSSDを搭載するためこのデバイスだけを外に持ち出し、キャプチャすることもできるという。
このデバイスは米Adobeとの共同開発で、取得したデータはまずは「Adobe Substance 3D」で処理することになる。その後はsbsarという形式でファイルを出力できるので、仏ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE」や米Autodeskのソフトウェアといった他社のモデリングソフトでも利用できるようになる。
主な用途としては自動車業界、ファブリック、ゲーム制作などでの利用を見込む。「自動車のダッシュボードやドアパネル、シート素材、アームレストの革のシボ感など、実物に近いフォトリアリスティックな素材表現が必要なカタログ写真や設計資料の作成に活用できます」(杉浦さん)
カンファレンスではAI PCなどの製品を担当する岡宣明さんが、同社のAI PC独自の機能を説明。中でも注目は、AI処理性能の高いPCブランド「Copilot+ PC」に適合する同社製PCの一部でオンデバイスのLLMが標準搭載となったことだ。
「HP AI Companion」という同社提供のチャットAIソフトウェアでは、AIとの対話や、PDFやdocxファイルなどを渡しての分析などが可能。従来はクラウドAIのみの対応だったが、このほどオンデバイスモードに対応した。
クラウドAIは米OpenAIの「GPT-4o」。オンデバイスAIは米Microsoftの「Phi 3.5」を採用し、ネット接続がない環境でもGPT-4o miniやGoogleの「Gemini 1.5 Flash」に相当する性能のAIが利用できるようになる。
ただし、オンデバイスモードの実行にはCopilot+ PCの要件(40TOPS以上のNPUなど)の他に、32GB以上のメインメモリも必要だ。2月にも岡さんはITmedia AI+の取材に対し「メモリ32GBモデルが急激に増えている」と明かしていたが、このオンデバイスモードに必要なスペックだったというわけだ。
その他の講演内容は、以下画像を参照のこと。
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