東京大学大学院工学系研究科の研究グループは10月1日、一度のフル充電で1カ月以上動作するというARデバイス用指輪型無線マウス「picoRing mouse」の開発に成功したと発表した。
BLEなどの従来の技術では数時間で電池切れしていたが、新たに、リストバンドを経由して指輪デバイスとARグラスをつなぎ、指輪を超低電力で通信させる方式を開発。消費電力をBLEの2%まで削減した。「屋内外を問わず、いつでもどこでもARインタラクションができるようになると期待できる」としている。
従来の指輪型入力デバイスは物理的に小さな電池しか搭載できず、BLEなどでARグラスに直接通信すると、5〜10時間程度で電池が切れていた。
研究グループは、NFCなどでも利用される、磁界バックスキャタ技術に着想を得た。従来の磁界バックスキャタ技術は、無線通信と無線給電を同時に行うようコイルを設計するため、通信距離が1〜5cm程度に特化していた。
今回、複数のコンデンサをコイルに分散配置した高感度なコイルと、通信対象からの信号だけを効率的に取り出すバランスドブリッジ回路を組み合わせることで、指輪とリストバンド間の中距離(12〜14cm)通信に特化した高感度な磁界バックスキャタを開発。通信距離を延ばし、信頼性の高い低電力通信を実現した。
指輪型無線マウスは、磁気式トラックボールとマイコン、バラクタダイオード、コイルを組み合わせた負荷変調システムだけで実装でき、最大消費電力は449μW済むという。
研究成果は韓国で9月28日から10月1日に開催された国際会議「UIST2025」で発表した。
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