iRobotは2005年に米NASDAQへ上場。ロボット専業メーカーとして初のIPO(株式公開)を果たした。そしてIPOで調達した資金でiRobotは世界へ事業を拡大する。
日本でも04年に販売代理店のセールス・オンデマンドがルンバを発売して人気商品となり、13年までに日本での累計出荷台数は100万台を超えた。ルンバは“お掃除ロボット”の代名詞となり、「ルンバ猫」などのネットミームを生み出す。ルンバが障害物などに引っかかった際に「助けを求めています」という通知がくることも話題になった。
そんなiRobotの事業が最も好調だったのは19年から21年にかけて。同社の株価は一時124ドル前後まで上昇し、22年にはルンバの世界累計販売台数が4000万台を超えた。
しかし、その頃には中国メーカーの成長も著しく、競争は激化。メーカーシェアこそiRobotがナンバーワンを堅持していたものの、iRobotは次第に負債を抱えていた。
22年8月、iRobotは米Amazonからの買収提案に合意する。この時の条件は、iRobot株1株あたり61ドルで、買収総額は負債を含め約17億ドル。当時の為替レートで約2200億円という規模だった。
Amazonに買収されていれば、その後の展開は大きく変わっていたかもしれない。しかし実際は欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会がこの合意に懸念を示し、Amazonは24年1月に「承認を得る道がない」として買収を断念した。
この時、三人の共同創業者のうち最後まで残っていたコリン・アングル会長兼CEOが辞任。従業員も約31%に当たる約350人が解雇された。
24年にはもう一つ、大きなできごとがあった。iRobotは四半期ごとのメーカーシェアナンバーワンの座を中国Roborock(ロボロック)に奪われたこと。さらにECOVACS(エコバックス)、Dreame(ドリーミー)、Xaomi(シャオミ)といった中国勢が続く。市場調査会社のIDCが6月に発表した25年第1四半期のロボット掃除機の世界メーカーシェアは上位4位までを中国勢が占め、iRobotは5位だった。
今年3月、iRobotは年次報告書(Form 10-K)に「新製品ラインが成功する可能性は十分にあるが、それでも負債を返済する他の手段が見つからないと、12カ月以上事業を継続できない可能性がある」というGC注記(going concern:企業の継続性についての注意書き)を入れたことで注目を集めた。4月に来日したゲイリー・コーエンCEOは「財務基盤の強化策を進めている」と説明していたが、今回のチャプター11申請と買収に至った。
ただし、これで終わりではない。アイロボットジャパンの声明にあるように、米国のチャプター11申請は「企業が事業を継続しながら再建計画を策定できる独自の制度」。iRobotが製造パートナーだった中国PICEAの傘下に入り、財務基盤を固めて事業を再建するのに必要な“手続き”でもあるからだ。
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