ITmedia NEWS > 製品動向 >

「古生物ぬい」のこだわり、そして「Nuiパン」の発想力 ブームを支える開発者たちに聞いた、ぬいぐるみ作りの“秘訣”とは分かりにくいけれど面白いモノたち(7/8 ページ)

» 2025年12月27日 13時05分 公開
[納富廉邦ITmedia]

「可愛い」は大前提、リアルも追求

 大絶滅展のぬいぐるみもそうだが、「可愛い」は大前提としながらも、「リアル」でなければならない部分は、徹底的に追い込んで作る。それが結果的に、ぬいぐるみをただ可愛いものではなく、面白いから可愛い、こだわりがあるから可愛いという、現代的な可愛さにつながる。

 かつて、女の子が何でも「カワイイ」というのは、対象を下に見ているからという考えが主流の時代があったけれど、今の「可愛い」は明らかに違ってきている。それこそ、「枕草子」でいう「をかし」に近い感覚なのではと思えるシーンをよく見るようになった。

製作に最も手間がかかったという「キャラクターパン(すわり)」(Sサイズ、各2640円)。パンをくっつけたように見える耳の付き方や、焼き目のムラ、ちゃんと座るようにバランスを調えたところなど、注目ポイントもたくさん©Disney

 例えば、この「Nuiパン」のミッキーマウスとミニーマウスが座っている形のパンをぬいぐるみにした「キャラクターパン(すわり)」は、伊藤さんが最も造形に苦労したものだそうだ。一見、一番、従来のぬいぐるみに近い、茶色いだけの座っているミッキーマウスのぬいぐるみに見えるかもしれない。しかし、これが「パン」だと思って見ると、細部の異常なほどの凝りようが見えてくる。

 「意外とこの『キャラクターパン(すわり)』が、最後まで難しかったです。例えば、耳の部分ですが、ミッキーマウスの耳って本当は平らじゃないですか。でも、パンで作るとなったら、丸い生地を顔部分につなぎ合わせて作ると思うので、耳の部分に丸さがないとパンに見えないのかな?というのがあって、型紙とかも相談を重ねながら、どうやったらこの丸さを出せるかとか、付け根の部分も、どうしたら、パンをくっつけて作ったように見えるかとか、かなり何度も試行錯誤しています」と伊藤さん。

ミッキーマウスとミニーマウスでは、縫製の仕方も違うし、焦げやすい底の部分の焦げ感も変えてある。型紙を作ってから、焼き目のプリント・データを作って昇華転写プリント、それを手作業で縫製という手順で量産品を作るのは、アイデアと技術の連携があってこそ

 さらに、手に取って見れば分かるのだけど、この「キャラクターパン(すわり)」は、布自体に焼きムラが印刷されていて、それが一つひとつ微妙に違っているといった部分までリアルさを追求している。ただ、この焼き色をリアルに見せるのも難しかったそうだ。

 「ぬいぐるみでは珍しいかもしれませんが、今回、布はまず型紙を作った後、それに合わせて焼き目のデータを作って、布に昇華転写のプリントをしてもらっています。それで作っても、色味がちょっと薄くておいしさが足らないとなったら、もうちょっと濃くして、すると焼きすぎちゃって焦げ焦げになって、今度はもうちょっと薄くしてみたいな感じで、何度もやり取りを繰り返しました」と伊藤さん。

 そういう話を聞くと、まるでパン屋さんが新製品のために試作を繰り返すのと似ているような気がしていたら、「ぬいぐるみって金型を使っているものとは違って、縫製工程は全部手作業で作っています。だから、パンの膨らみ具合とか焼き目の具合とかが一個一個微妙に違ってくるんです。最初に企画を考えた時に、パンというモチーフがぬいぐるみにぴったりだなっていうふうに思った理由の一つでもあります」と伊藤さんも言う。そういう部分も含めて、このぬいぐるみのリアリティーが生まれているのだろう。

ミニーマウス・モチーフの「クロワッサンロール」(チェーンストラップマスコット、1980円)は、普段使いのバッグに付けている。しっかりしたゴールドチェーンが使われているなど、大人がバッグにつけてもおかしくない配慮がされているのが嬉しい。ミッキーマウス・モチーフのチョコがけタイプも好き

 私が個人的に気に入っているのが、「クロワッサンロール」のミッキーマウスとミニーマウス。なんと、顔が描かれていないのだ。ミッキーマウスやミニーマウスの、輪郭だけで分かるというキャラクターデザインを生かして、パンとしてのリアリティに振ったアイデアは、これこそ「Nuiパン」だと思う。フォルムの可愛さと、パンとしてのおいしそうな焼き加減に、ちょっとしたユーモアも含まれていて、とても気に入っている。

 特にロール部分の、柄を丁寧に描いたプリントの上から、わざわざステッチを入れて「巻かれている」立体感も表現。耳のコーティング部分は布の質感を変えて、チョコっぽさを出しているなど、もう美術品といってもいいレベルだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR