「輸入車(特に中国製EV)に対する補助金は必要ない」という意見も多く目にします。しかし、国内生産の日本車だけを優遇すると、様々な条約や国際協定、WTOなどの貿易ルールに抵触します。
これを言うと昨今のレアアースの事実上の輸出制限からも分かるように「中国だって貿易ルールに抵触することを平気でやっている。不公平だ」と怒りをあらわにする人もいるでしょう。ただ、“ジャイアン”な中国を相手に国際的なルールに抵触するような所業を行うと、倍返しで“返り血”を浴びる可能性もあるわけで、日本政府としてそこまで踏み切れるのか、という話になります。
ジャイアンと言えば、トランプ政権にも言えるでしょう。輸出が中心の日本の自動車産業に大きな影響を与える「トランプ関税」などは、国際規範などどこ吹く風で、日本を含む世界各国に大きな経済的混乱を与えているわけです。
WTOには輸入制限(関税・数量制限など)などを正当化する例外的な項目が設けられていますが、大国の横暴の前に機能不全に陥っています。トランプ大統領は、関税に限らず、他の分野でも米国の国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として議会の事前承認など介さずやりたい放題というのは、日々のニュースからもお分かりでしょう。まさに専制君主ドナルド1世(©ロバート・デ・ニーロ氏)と揶揄されるゆえんです。
日本政府としては、ジャイアンを怒らせないように、報復を受けない範囲でずる賢く日本国の利益を最大化するよう上手に立ち回る必要があるわけです。ダボス会議でのカーニー首相の演説ではないですが、「何でも大国の言いなりかよ」と、忸怩たる思いにも至りますが、大国の横暴に加え、魑魅魍魎が跋扈する外交の難しさといったところでしょう。
話を補助金に戻します。今回、中国BYDの補助額については、増額なしの据え置きです。これは霞が関のお役人が、算出ロジックを上手に設定することで、ある意味BYDに不利な仕組みを構築したのではないかと推測しています。あくまでも筆者の推測です。
補助金額は主に「車両性能」「充電インフラ整備への取り組み」「整備の体制/供給の安定性/安全性」などの項目を点数制で評価します。ちなみに、「車種ごとのサイバーセキュリティへの対応」などという項目もあり、想像論・印象論として、中国企業的には不利かなと...。
令和7年度補正予算における車両補助金総額は、1100億円です。筆者のような門外漢では調査しきれませんが、輸入車EV狙い撃ちで補助金を支給せず、米国や中国から報復措置を受けた際の経済的な損失額を考慮した場合、もしかしたら1100億円など簡単に上回る可能性もあるのではないでしょうか。物事の一面だけを見て「EVに対する補助金などけしからん!」というのはどうかな、と思うわけです。経済安保や外交って難しいものですね。
著者プロフィール
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
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