社外取締役達とようやく話せるようになった後も彼らのスタンスは変わらず、会社に残る場合は議決権を全て譲渡するといった不利な条件をまとめた契約書へサインするように求められた。山田氏は「この時点で私は、『この社外取締役たちと一緒に事業を進めても、飲食業界も弊社のメンバーたちも、誰も幸せにならない』と感じていました。『特定の株主がキャピタルゲインを得て終わり』だと」と記している。
「ダイヤモンド・オンライン」にセクハラ疑惑記事が掲載されたのは12月17日だった。ダイニーは翌日までに記事の内容を否定するプレスリリースを発表(現在は法廷闘争中)。しかし、これすらも社外取締役達から「否定リリースを出してほしければ不利な条件で辞任しろ」と交渉材料にされたという。
なぜ、事実ではないと分かったはずのセクハラ疑惑によって取締役会は退任を迫ったのか。
山田氏は「構造的な対立だった」と分析している。25年上半期の時点で株主が期待する“3倍成長”は難しいことが見えてきた。このため、社外取締役や一部株主とは経営方針などをめぐってたびたび衝突。例えば社員へストックオプションを付与する案は、一部株主の意向により株主総会で議案ごと棄却されるなど、一度は合意したはずの施策でも反故になることが増えたという。「取締役会はもはや『ディスカッション』ではなく、『一方的に大声で罵倒される場』でした」。
一方で、自身は飲食店との間に立つ現場仕事が好きだったという山田氏。「お店のオペレーションを見て、困りごとを聞いて、プロダクトの方向性に反映する。『顧客とプロダクトの結節点』に自分がいることが、ずっと自分の仕事の中心でした」と振り返る。
そうした行動もあってか、山田氏の進退問題が騒動になった時にはダイニーに「数百社・数千店舗レベル」の抗議が寄せられ、飲食店経営者による「山田真央の不当な解任に抗議する」という署名活動も行われた。中には担当者に「このままだと解約する」と直接連絡してきた店もあったという。
結局、山田氏はCEOを辞し、平社員としてダイニーに戻ることを決意した。現場や社員の混乱は抑えたいが、顧客の声には応え続けたいという判断のようだ。「肩書きが何であれ、やることは変わりません。私は、飲食業界に向き合い続けます」。
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