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「衛星放送」終焉の序章か――「BS4K」民放5社撤退のインパクト小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(3/3 ページ)

» 2026年05月15日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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無料でもネットサービスに勝てない理由

 民放5社のBS4K放送は、広告モデルなので視聴者は無料で視聴できる。よって今回の撤退は、課金モデルでの競争ではない。それは、「選べるか選べないか」の、インタフェースの問題だったのだろうと思う。

 テレビ放送は一方的にコンテンツを送りつけるだけなので、視聴者に選択権はない。テレビ局という「神」が決めた番組編成に人生を合わせていく必要がある。一方ネット配信は、レンタル事業のようにユーザーが選択し、好きな時間に視聴できる。神の決定に従う必要はない。

 それでもまだテレビ放送は、「リアルタイム」の強さで生き残れると信じた。世界的スポーツイベントのライブ中継は、そのノウハウと、1000万人単位が同時に見ても負荷が変わらない放送という仕組みによる独壇場だと思われていた。

 だが前回のWBCは、Netflixの国内独占配信でもリアルタイム性はさしたる問題にならず、配信面では成功した。ネットでも、1000万人単位の大規模視聴ライブ配信は可能だった。中継・制作技術は、日本テレビが制作受託という形で支えた。受託と言えば聞こえはいいが、事実上大手テレビ局が下請けになるという、これまでになかった形態だった。

 廃止されるBS民放5社の4Kコンテンツは、今後「WOWOWオンデマンド」で無料配信されるという。つまりプラットフォームとして衛星から降り、衛星放送局として先にネット配信に踏み出したWOWOWへ相乗りするということである。

 WOWOWオンデマンドは有料課金サービスなので、無料枠を作るということだろう。だが完全無料では制作費が出ないため、広告モデルでの配信になると考えられる。

 民放各社が共同運営する「TVer」でそのまま配信するというわけにはいかなかったのは、地上波番組と肩を並べても勝てないこともあるだろう。ともに衛星で苦労したWOWOWと組むことには、一定の筋はある。

 ただWOWOWのメインコンテンツは、海外から買ってきた強力なコンテンツである。民放BS制作の番組とは、明らかに予算も違えばレベルも違う。サービスとしてのカラーにどう馴染ませるかが、課題となるだろう。

 今後、衛星放送というインフラはどうなるのか。令和6年末の段階では、2029年度後半にBSとCSの共同衛星を新規に打ち上げるという計画も示されていた。この時点ではまだ、衛星放送は新規事業者がバンバン参入して拡大するという見込みでの話である。

令和6年9月11日付の「衛星放送ワーキンググループ取りまとめ概要(案)」

 だがこれは衛星放送ワーキンググループ第二次取りまとめでは言及されておらず、計画としてまだ生きているのかどうか、定かではない。民放5社が撤退を決めた今、共同衛星打ち上げ計画は少なくなった衛星放送局を一つにまとめるという話に変わってくるが、それは縮小計画としてコスト的に割が合う話なのか。

 元々民放BS5社は自己インフラを持たない放送局で、番組制作中心に動いていた。これは、番組制作とインフラ運用を別事業者に分けている英国型の地上波放送システムに近い。

 そして英国では、もう地上波テレビ放送は電波を止めてネットに移行したらどうか、という議論が進んでいる。最終的にはそうなるのが自然な形なのかもしれないが、果たしてわれわれが生きている間に日本でもそれが起こるだろうか。

 それを確かめるには、なるべく長生きしてみるしかない。

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