インタビュー

クアッドSSD搭載の「VAIO Z」を速攻で丸裸にする完全分解×開発秘話(2/3 ページ)

Core i7、クアッドSSD、外部GPU、フルHD液晶、BDドライブを持ち運べるボディサイズに凝縮した新型「VAIO Z」。開発者に話を聞きつつ、その内部構造を明らかにする。

軽量化するためにシンプルな設計を追求

注意

製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません。

VAIO Zを分解する鈴木雅彦氏。「人前で分解するのは緊張する」と笑いながら、慣れた手つきでVAIO Zのパーツを取り外してくれた

 それでは、VAIO Zを分解してもらい、内部構造を見ていこう。まずは本体を裏返し、底面のバッテリーを外し、底面のネジもすべて外す。しっかり剛性を出すため、底面のネジはかなり多めだ。また、ボディの軽量化を優先して、底面のネジを隠すようなデザインにはしていない。鈴木氏は「デザイナーには怒られるが、VAIO Zでは見た目の美しさのために、ネジを隠す別パーツの重量は確保できない」という。

 ネジをすべて外した後、本体を表に返すと、切削加工によるアルミ製のトップカバーがきれいにはがれる。アルミ製のトップカバーを取り外すと、基板全体が露出する構造だ。外装のパーツ数はかなり少なく、シンプルな設計になっている。その理由について鈴木氏は「簡単な構造のほうが軽くできるため、今回は極力シンプルな設計にこだわった」とのこと。

 314(幅)×210(奥行き)ミリのフットプリントに、ハイスペックなパーツを敷き詰めているのはVAIO Zの大きな見どころだ。各パーツのレイアウトは、左上が冷却ファン、中央がCPUやチップセット、外部GPU、メモリスロットなどを搭載したマザーボード、右側が光学ドライブ、パームレストの中央がSSDモジュールとなっている。金森氏は「13.1型ワイド液晶搭載ノートの限られた面積に、ここまでのハイスペックを凝縮した製品はほかにない」と力説する。

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取り外したアルミ製のトップカバー。キーボード、シリンダー状のデザイン、パームレストまでが一体化してある

キーボードが張り付けられたトップカバーの裏面。液晶ディスプレイのヒンジ下にステレオスピーカーを内蔵している。削り出しによるカバーの厚さは部分的に変えてある

トップカバーを外すと、内部の構造が明らかになる。パームレストに向けて伸びている白いケーブルの先は無線LANアンテナ(残る2本は液晶ディスプレイ上部)、青いケーブルの先はBluetoothのアンテナだ

独自仕様のモジュールでクアッドSSD構成を実現

 そのスペックだが、分解した機材は直販のVAIOオーナーメードモデルで、CPUはCore i7-620M(2.66GHz/最大3.33GHz)、メモリは4GバイトDDR3 SDRAM(2Gバイト×2/PC3-8500)、データストレージは合計256Gバイト(64Gバイト×4、RAID 0)のクアッドSSD、光学ドライブはBlu-ray Discドライブ、ディスプレイは1920×1080ドット(フルHD)表示と、かなりハイパフォーマンスな構成だ。

 この中で特に注目すべきはSSDで、独自形状のモジュールを新たに採用している。基板の両面にフラッシュメモリとコントローラをそれぞれ実装し、1枚の基板の裏表でRAID 0構成のデュアルSSDを実現する仕組みだ。各コントローラがそれぞれSerial ATAポートに接続され、4ポートを使用している。

 分解した機材では、このデュアルSSDを2枚重ねて内蔵し、クアッドSSD構成としている。金森氏は「クアッドSSDというアイデアは開発の初期段階からあったが、開発がスタートしたのは1年以上前だったので、当時はSSDの価格がここまで下がっておらず、社内を説得するのに苦労した」と振り返る。


取り外したクアッドSSDのユニット。デュアルSSDモジュールを2枚に重ね、マウンタに装着してある。サイズ、端子ともに汎用のものではなく、専用設計のSSDとなっている

デュアルSSDモジュールの表と裏。それぞれにフラッシュメモリとコントローラを装備する。端子は片側にしかないが、片面で1基のSSDとなっており、両面で2基のSSDという扱いになる

SSDを接続するフレキシブルケーブルは、2枚のデュアルSSDモジュールをつなぐため、先が二またに分かれている

 光学ドライブも専用設計だ。全面にパンチング加工をして軽量化したほか、イジェクトボタンがない設計にしている。トレイのイジェクトはキーボード上部に配置された専用のボタンで行う仕組みだが、ボタンを押してからすばやく反応するように、ファームウェアも書き替えたという。


Blu-ray Discドライブも別注で軽量化した

裏面は軽量化のため、大胆にパンチングしてある

イジェクトボタンはキーボードの上部にある

 今回は分解しなかったが、液晶ディスプレイにもこだわっている。直販モデルでは、Adobe RGBカバー率96%の広色域に対応した1920×1080ドット(フルHD)表示の液晶ディスプレイを選択でき、金森氏によれば、カメラマンや個人投資家など、画質や解像度にこだわるユーザー層の新規開拓も狙うという。

Core i5/7に世代交代し、熱設計の難度は上がったが……

 CPUをCore 2 DuoからCore i5/7シリーズ(開発コード名:Arrandale)に世代交代したうえ、ボディを薄型化したため、熱設計の難度は上がったという。鈴木氏は「以前より通常電圧版のCPUを使っていたので、VAIO Zの熱設計には余裕があったが、Intel Turbo Boost Technologyでクロックがダイナミックに変動するCore i5/7は、常にCPUコアが動作していて、平均すると従来より熱量も上がっていることもあり、熱設計は難しくなった」としながらも、「薄型で冷却効率がいいファンを新たに採用したり、エアフローを調整することなどで、十分な放熱性を確保できた」とアピールした。

 また、Core i5/7ではチップセットが1チップに減ったため、実装面積に余裕ができ、これが1Gバイトのグラフィックスメモリを搭載するぶんなどに割り当てられている。マザーボードは実装密度の高い1枚の基板で構成されているが、鈴木氏によれば、各パーツの配置を最適化することで、細かな基板を排し、軽量化に努めた結果という。


取り出したマザーボードの底面側には、CPUと外部GPU、2基のSO-DIMMスロットを配置。CPUと外部GPUには冷却ファンが装着してある

マザーボードの天面側には、チップセットのほか、ハーフサイズのMini PCI Expressカードスロットが配置されている。同スロットには無線LANとWiMAXのコンボモジュールが装着される

冷却ファンを取り外した状態。CPUのCore i7-620Mと外部GPUのNVIDIA GeForce GT 330M、オンボードのグラフィックスメモリが露出した

ヒートシンクを取り外し、Intel HM57 Expressチップセットが露出した状態

冷却ファンは銅製ヒートパイプでCPUと外部GPUを放熱する

冷却ファンの裏側。ファン自体は薄く仕上がっている

左が従来機のファン、右が新モデルのファン。薄型化しつつ、フィンの形状を変更するなどして、冷却効率を高めた

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