端末不況が直撃──“足もとの弱さ”が垣間見えたソフトバンクの2009年春モデル神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2009年02月05日 08時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 KDDIとソフトバンクモバイルは1月29日、そろって2009年春モデルを発表した。前回はKDDIの変化と復活に向けた兆しに言及したが、この2年ほど純増数において快進撃を続けるソフトバンクモバイルのラインアップと戦略はどうなのか。今回はソフトバンクモバイルの春商戦に臨む姿勢にフォーカスする。

端末分野の訴求力・牽引力が失速

 「端末分野における訴求力と牽引力に急ブレーキがかかった」

 これがソフトバンクモバイルの2009年春モデルのラインアップ全体に対する、筆者の第一印象である。

 同社は2007年初頭に、月額980円という衝撃の料金プラン「ホワイトプラン」を導入してから2年ほど、携帯電話業界の“台風の目”だった。料金プランや端末販売方式におけるビジネスモデルを変更し、利用時間制限付きではあるがキャリア内音声定額サービスも導入。家電量販店を中心とした店頭の“空気”と“トレンド”をすばやく読み取り、矢継ぎ早に新機軸を打ち出した。ドコモやKDDIの関係者の多くが「あれは自転車操業だ」と揶揄し、眉をひそめたが、その自転車のスピードに両社が翻弄され続けたのも事実である。

 このソフトバンクモバイルの好調を下支えしたのが、他キャリアよりも一歩先を行く「魅力的な端末」だった。同社のビジネスモデルと経営戦略が、「新規契約の獲得」と「端末販売数の拡大」に重きを置いていたこともあり、ソフトバンクモバイルの端末ラインアップは、機能やデザイン、商品企画において他キャリアを圧倒していた。ドコモやauよりもフットワークよく魅力的な端末を投入していったことが、ソフトバンクモバイルの店頭訴求力の高さにつながったのだ。

 しかし、今回発表された春商戦向けのラインアップからは、そうした「攻めの姿勢」がすっかり失われている。

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Photo ソフトバンクモバイルの2009年春モデルはAQUOSケータイ「932SH」、VIERAケータイ「930P」、EXILIMケータイ「930CA」といった高機能モデルのほか、830N、831SH、831P、731SC、830SH for Biz、831SH KTの9機種をラインアップ

 かろうじてシャープのAQUOSケータイ「932SH」は、世界初のダブルワンセグチューナー搭載や新サイクロイド機構でドコモ向けシャープ端末を上回ったが、それ以外の端末に“ソフトバンクならでは”の目新しさはない。特にパナソニック モバイルコミュニケーションズ製の「930P」とNEC製の「830N」はドコモ向けの類似機種との差異性がほとんどなく、ドコモからの乗り換えユーザーを狙ったとしても、あまりに向上心のないモデルになっている。「831P」や「831SH」など販売量を狙った普及モデルも、大きな欠点はないが、これといって店頭で人目を引く個性もない。

 次のトレンドや新たな技術を積極的に取りこむ姿勢も弱くなった。それが顕著に現れているのが、タッチパネルやQWERTYキーボード、スマートフォンの扱いだろう。一般ユーザー層がターゲットとなる春商戦で技術志向の高い製品が少ないのは当然であるが、2008年を振り返れば、このタイミングで「インターネットマシン 922SH」を発表している。また、2008年冬に発表した「モバイルウィジェット」対応機種は増えたものの、その操作はタッチパネルからキー操作に変更されており、UIが進化するどころか退化してしまった印象だ。タッチパネルUIをさらに進化させて、モバイルウィジェットの使い勝手や利便性を高めてほしかっただけに残念である。

安直な「コンテンツ勝負」に疑問

Photo 今回の発表会はお笑いライブの形で行われた。吉本興業のお笑い芸人たちが登場し、端末の特徴などを紹介。さらには賞金総額2億2000万円のお笑いバトル企画「S-1バトル」の開催も発表された

 もう1つソフトバンクモバイルの春商戦へのスタンスで疑問なのが、賞金総額2億2000万円をかけるという、お笑いバトル企画「S-1バトル」だ。

 孫正義社長は「今年は『インターネットマシンで何を楽しむか』、携帯がより楽しいという世界を作っていきたい。コンテンツの勝負に時代が変わってくる」とコメントしたが、その答えが昨今の“お笑いブーム”の尻馬に乗ったS-1バトルというのは、いかがなものか。そもそも携帯メールと携帯の動画サービスを使うというS-1バトルの仕組みが、これまでの「インターネットマシン」の文脈で語られていたコンセプトと合致していない。

 データARPUを向上させるため、独自コンテンツを重視するという姿勢そのものは間違っていない。だが、新しいコンテンツ市場や文化を育てるのではなく、すでにブームになっている「お笑い」を高額賞金だけで囲い込もうとするのは安易にすぎないだろうか。これまでコツコツと「お笑い文化」を育ててきた関係者や一般のファンに対しても失礼だと筆者は感じている。

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