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後発auが投げた「スマートブック」という変化球神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

コンシューマー向けスマートフォンの第1弾としてKDDIが投入する、QWERTYキー搭載の“スマートブック”「IS01」は、KDDIがスマートフォン市場にどのような姿勢で取り組むのかを如実に体現している。

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 KDDIが3月30日、auの新スマートフォンラインアップ「IS series」2機種を発表。Android搭載スマートブック「IS01」とWindows phone「IS02」を公開した。

 詳しくはニュース記事に譲るが、シャープ製のIS01は、タッチパネル対応の5.0インチ液晶とQWERTYキーボードを搭載したAndroid端末。ユニークな形状と、ワンセグや赤外線通信など、日本の従来型携帯電話(ケータイ)機能への対応を積極的に行っているのが特長だ。一方、東芝製のIS02はスライド型のQWERTYキーボードを搭載したスマートフォン。静電式タッチパネル対応の4.1インチ有機ELディスプレイや独自UI「NX!UI」を搭載したほか、日本で初めてWindows Mobile 6.5.3に対応した。

 周知のとおり、auはコンシューマー向けスマートフォン分野への進出でソフトバンクモバイルやドコモに後れを取り、大手3キャリアの中では最後発になる。auは、スマートフォンという新興市場にどう取り組むのか。今回発表されたIS01とIS02の中で、“auの戦略モデル”になるIS01にフォーカスしながら考えてみたい。

“iPhoneだけ”の市場に、二段構えで斬り込むau

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IS01を手にほほえむKDDI 取締役執行役員常務 コンシューマー商品統括本部長の高橋誠氏とGoogle アジア太平洋 販売営業担当副社長 ダニエル・アレグレ氏

 「スマートフォン市場に乗り遅れたといっても、実質、売れているのは(Appleの)iPhoneだけ」

 IS seriesの発表にあたり、KDDI 取締役執行役員常務 コンシューマー商品統括本部長の高橋誠氏は何度も繰り返した。iPhoneは昨年夏の「iPhone 3GS」投入以降、常に販売ランキングの上位に顔を出す大ヒットモデルになっている。最近では、都内など都市部においてiPhoneユーザーの姿は珍しくなくなった。従来型のケータイがハイエンドモデルを中心に販売不振に苦しむ中で、iPhoneシリーズだけが順調に販売数と販売シェアを伸ばしているのが現状だ。誤解を恐れずにいえば、現在注目されているコンシューマー向けのスマートフォン市場の実態は、「iPhoneが作りあげた新興市場」と言える。

 そのような中で、auのISシリーズは二段構えの戦略で、iPhoneが開拓したコンシューマー向けスマートフォン市場に斬り込む。その一段目が「iPhoneと異なるフォルム・コンセプトのスマートフォン投入」だ。IS01が、これに当たる。

 前述のとおり、IS01はタッチパネル対応の5.0インチ液晶とQWERTYキーボードを搭載し、横向きのクラムシェル(折りたたみ)構造になっている。入力UIも、キーボード、タッチパネルに加えて、「BlackBerry Bold」や「HT-03A」を彷彿とさせるトラックボールも用意されており多彩だ。iPhone登場以降、国内外のコンシューマー向けスマートフォンが「フルタッチパネル」とシンプルなストレート型の「スリムデザイン」を採用するのとは大きく異なるフォルムになっている。一目で、“iPhoneではない”ことがはっきりと分かる。現在、主流のiPhone型のコンセプトではなく、あえてキーボード型を選ぶことで“iPhoneのイメージに引きずられる”ことを避けたのだ。

PhotoPhoto IS01はあえてキーボード型を選ぶことで“iPhoneのイメージに引きずられる”ことを避けた

 「IS01のコンセプトは1年ほど前に決めましたが、当初から『2台目需要』を狙っていました。その点で、iPhoneとは大きく(コンセプトが)異なる。だから、名前もスマートフォンではなく、スマートブックとしています。

 こういったキーボード型の2台目端末は爆発的に売れるというものではありませんが、確実に一定数の需要がある。Android搭載機はこれまでのケータイみたいに短期間にモデルチェンジをするものではないから、ロングセラーを狙っていきたい」(高橋氏)

 スマートフォンというと、多くの人がiPhoneを脳裏に描く。しかし、インターネットとの親和性が高く、ソフトウェアによる拡張性を前提とした通信内蔵の小型モバイル端末のバリエーションは、iPhoneタイプだけとは限らない。KDDIは、イメージリーダーとしてのiPhoneの強さを認めた上で、スマートフォン市場の周辺にある「スマートブック」というAppleの未開拓領域に変化球を投げたのだ。ここが、iPhone類似のコンセプトを持つ「Xperia」投入で、直球勝負を仕掛けたNTTドコモとの違いと言える。

iPhoneに対抗できるのは「日本のケータイ」

 むろん、スマートブックのIS01だけでは、ニッチ市場の開拓しかできない。auはIS seriesの第二段目のステップで、コンシューマー向けスマートフォンの主流市場に斬り込む。すなわち、iPhone市場に正面から挑む。ここでiPhone対抗のポイントになるのが、「ケータイとスマートフォンのいいとこどり」(高橋氏)だ。iPhoneに限らず、Xperiaや「HTC Desire」など多くのスマートフォンが、日本市場だけの使い勝手よりも、グローバル市場に製品投入できる汎用性を優先している。しかし、auのスマートフォン戦略では逆に日本メーカーの“地の利”を生かして日本市場に特化した機能やキャリア主導のサービスにも積極的に対応する。これまで培ったケータイの要素を積極的に取り込むことで、日本のケータイとは異なるコンセプトで“心地よさ”を完成させたiPhoneに対抗していく考えだ。

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