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» 2012年05月09日 16時00分 公開

エネルギー管理:電力見える化システムのよく効く使い方 前編 「節電の基本戦略を練る」 (2/2)

[目黒眞一/エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ,スマートジャパン]
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行き詰まりの打破にも見える化が効く

 以上で示した3つの基本戦略から消費電力削減策を立てても、どれか1つを選んで実行しているだけでは最大の効果は期待できない。その企業の実態に合わせて、実行可能なすべての対策を組み合わせて実行に移すべきだ。

 しかし、さまざまな対策を考えてすべて実行に移すと、「やれることはやってしまった」「あとは何をしたら良いのか分からない」と行き詰まってしまうことがある。

 この問題を打破するには、組織に属する一人一人に、消費電力量を削減することを意識付け、モチベーションを高める必要がある。一人一人のモチベーションが高まれば、消費電力量削減策を長く続けられる。

 一人一人のモチベーションを高める方法としては、企業の部門や組織ごとに削減目標を設定し、目標を達成した部門に何らかの褒賞を与えるという方法が考えられる。たとえ褒賞が大きなものでなくとも、具体的な目標を設定することで、部門や組織の間で競争するようになり、競争が続くと全体としての削減効果が大きくなると期待できるのだ。

 ここでポイントとなるのが電力の見える化システムの活用である。途中経過を何も知らせず、年度末に消費電力の削減量が大きかった部門を表彰するだけでは、競争による効果はあまり期待できない。組織の一員としては「そうだったのか」で終わってしまう。

 電力消費量を削減することを意識させ、電力削減量の大きさを競わせるには、電力の見える化システムを利用して、電力消費量や目標達成状況といったデータを、組織に属する誰もがいつでも確認できるようにすべきだ。データをいつでも確認できるようになると、今週はどれくらい電力消費量を削減できているのかといったことや、削減量トップの部門はどこなのかなどといったことが気になるものだ。

 データを確認できるようにする方法としては、業務で使用しているパソコンのデスクトップ上に表示する方法や、スマートフォンのアプリで状況を知らせるなどの方法が考えられる。表示する方法を工夫して、ゲーム感覚で楽しめるようにするのも有効かもしれない。

データの見せ方によって効果が変わる

 組織に属する全員が、電力消費量や目標達成状況といったデータを簡単に見られる環境を作るべきと述べたが、データの見せ方には注意して工夫しなければならない。

 例えば、月別の集計を見せたとしよう。電力消費量は分かるだろうが、どこに無駄があるのか分からない。どのように削減すればよいかヒントをつかむことも難しい。

 先に、企業の部門や組織の間で消費電力量の大きさを競わせるという方法を紹介した。例えばこの方法を実行に移すなら、部門別、組織別に消費電力を集計して、データを見せる必要があるだろう。部門の問題、組織の問題として削減効果を把握しやすくなる。配線の問題などで、部門別、組織別の集計が難しい場合は、部屋別、フロア別に集計しても良いだろう。

 組織などの単位別にデータを集計して見せると、単位ごとの比較ができる。電力消費量が多い組織、少ない組織、電力消費量削減策の効果が上がっている組織、あまり上がっていない組織を比べ、なぜ差が生じたのかを考える。組織によって業務内容や勤務時間が異なる場合は、似た業務を担当する組織と比較すればよい。

消費電力量の推移から人の行動が見える

 組織や部門で競争する環境を整えるほかに、電力の見える化システムを利用して、人の活動を把握するという方法も行き詰まりの打破に効果を発揮する。

 電力の見える化システムを利用して、時間単位、分単位と細かくデータを見られるようにし、空調、照明、OA機器など機器や用途で分けて表示すると、人間が電力をどのように消費しているのかが分かる(図2)。言い換えると、人の活動が見えるのだ。活動が見えると、解決すべき課題が見えてくる。

Transition of Energy Consumption 図2 あるオフィスの電力消費量の推移を機器別に計測した結果を表すグラフ。1段目は照明、2段目は空調、3段目はコピー機の消費電力量の推移を表す。この中でもコピー機の消費電力量を見ると、日によって消費電力量が推移する様子が明らかに異なることが分かる(出典:NTT-AT)

 オフィスにある機器の中でも、照明が消費する電力量の推移は人の行動をよく映している。例えば、昼休みに照明をきちんと消灯しているか、夜間に無駄な照明を使っていないか、会議室の照明をこまめに消しているかといったポイントをチェックできる。

 朝一番にオフィスに入った人が、いつ入ったのかということも分かる。最後にオフィスから退出した人がいつまでオフィスにいたのかということも分かる。長時間の夜間残業が常態化しているなど、従業員の行動が見えるのだ(図3)。

Difference of Energy Consumption 図3 オフィスの照明が消費する電力量の推移を表すグラフ。2カ所の測定結果を別々のグラフにまとめている。上のグラフを見ると、点灯開始時間と消灯時間がほぼ一定で、昼休みに完全消灯するなど、照明の管理が行き届いていることが分かる。一方、下のグラフを見ると消灯する時間がバラバラで、昼休みに完全消灯している様子も見えないことから、管理ができていないことが分かる(出典:NTT-AT)

 こうなると、業務改善によって消費電力を削減するということも考えらえるようになる。図4は複数のオフィスや食堂を対象に、照明が消費している電力量を集計し、勤務時間中に照明を消した部分の割合を算出したものだ。

Usage of Lights 図4 照明を使用している時間と、照明使用中に消灯した部分の割合を示したグラフ。節電への取り組みの違いがはっきり分かる(出典:NTT-AT)

 横軸は24時間の中で照明が点灯している時間の割合、縦軸は勤務時間中に照明を消した部分の割合を示している。これは、すべての照明が点灯したときを100%として示している。このようにして比較すると、長時間照明を点灯している組織、必要ない部分を消灯する取り組みが徹底している組織、していない組織が明確になる。消灯部分の比率の違いに着目し、なぜ違うのか分析すると、次の施策が見えてくるであろう。

 後編では、見える化システムを活用した具体例を紹介しながら、データを活用して考えた消費電力量削減策の例や、見える化によって、今まで見えていなかった大きな無駄を見付けた例について解説する。

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著者プロフィール

目黒 眞一(めぐろ しんいち)

エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(以下、NTT-AT) アプリケーション ソリューション事業本部 主幹部長。1976年、日本電信電話(NTT)の前身である、日本電信電話公社に入社、武蔵野電気通信研究所の基礎研究部に所属し、センシングやパターン認識の研究に取り組む。1995年から、NTTのグループ事業推進本部 新規事業開発室に移り、センサー関連の新規事業開発に携わる。2004年よりNTT-ATで、電力見える化システムの開発をはじめ、省エネ、スマートグリッド関連のシステム開発・プロジェクトマネジメント業務を担当している。経済産業省の国家プロジェクトである情報大航海プロジェクトのほか、総務省の省エネ関連のプロジェクトにも多数参画。


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