節電対策が進まない関西、15%の目標を達成できない企業が7割にエネルギー管理

大阪商工会議所が5月21日〜25日に緊急調査した結果、関西電力管内の今夏の節電目標15%を達成できないと回答した企業が7割にのぼった。ピークカットに効果的な発電・蓄電機器を導入する機運が高まっていないことも明らかになった。

» 2012年05月31日 13時52分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 政府が5月18日に発表した今夏の節電目標で、関西電力管内は15%の目標値が設定された。これを受けて大阪商工会議所が中核メンバーの企業151社を対象に緊急調査を実施し、達成可能な節電の割合や計画・検討中の対策について現状をまとめた。

ALT 図1 計画・検討中の対策で達成可能な節電の割合(有効回答企業73社、回答率48.3%)。出典:大阪商工会議所「節電要請が企業経営に及ぼす影響等に関する緊急調査」

 その結果、15%以上の節電が可能と回答した企業は28.8%にとどまり、7割の企業は目標を達成できない状況にある(図1)。特に資本金が3億円以下の企業では86.4%(22社のうち19社)が15%未満の節電しかできないと答えている。

 具体的な節電対策としては、電力使用量の大きい空調・照明・OA機器を挙げる企業が多く、特に空調と照明に関してはほぼ100%の企業が設定温度の変更などを実施する。一方、操業・営業日の変更など事業運営にも踏み込んだ対策をとる企業の割合は1割強である。

 節電目標の15%を達成するためには、毎日の電力使用量を15%削減する必要はなく、電力需要が極大化する気温の高い平日の午後1時〜4時のピークを15%カットすればよい。そのためには、太陽光発電や蓄電池の活用が効果的である。しかし調査結果を見る限り、この緊急事態にもかかわらず発電・蓄電機器を導入する動きは広がっていない。

 調査結果の中から、節電に有効な機器を使った対策の実施状況をピックアップしてみると、LED照明などの省エネ機器が47.9%と約半数で、発電機器は24.7%、蓄電池はわずか6.8%の企業が導入や増設を計画しているにすぎない(図2)。

 ピークカットに有効なデマンドコントローラやBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)に関しては不明だが、電力使用量の可視化を計画している企業が27.4%、電力以外のエネルギーを使った空調機器(ガスコージェネレーションなど)の活用も21.9%で、いずれも3割に満たない状況だ。

ALT 図2 節電に有効な機器を使った対策の実施率(計画または検討中。複数回答)。大阪商工会議所の調査結果から抜粋

 さらに、現在の計画で節電の割合を15%未満と回答した51社に対して、15%以上の節電を達成するために不可避な対策を聞いた結果では、56.9%の企業が操業・営業時間の短縮・変更を挙げている。これに対して機器を使った対策が必要と回答した企業は少ない。発電機器が21.6%、蓄電機器は13.7%である(図3)。特に資本金が3億円以下の企業や非製造業で導入意欲が低い。

ALT 図3 15%以上の節電を達成するために不可避な追加施策(計画または検討中。複数回答)。大阪商工会議所の調査結果から抜粋

 その最大の要因として、機器を導入するコスト負担や導入・運用体制の問題があると考えられる。関西電力管内において、政府や自治体が補助金制度の追加や導入・運用支援の強化を早急に進める必要がある。

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