家庭における本格的なエネルギー消費量制御に向けて、メーカーや政府が工程表作成へエネルギー管理

家庭における電力消費量を計測し、グラフなどの形でユーザーに提示するHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)が続々登場している。現段階のHEMSは電力消費量を計測する機能しか持たないが、HEMSから家電機器の運転状況を操作する通信プロトコル「ECHONET Lite」の策定が進んでいる。政府と家電メーカーなどは、ECHONET Liteの普及を促進するための会合を開いた。

» 2012年06月25日 16時21分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 経済産業省は、スマートハウスやスマートビルディングの普及拡大策を議論するため、スマートコミュニティアライアンス(JSCA)内に「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」を設置し、第1回の会合を開催した。会合では、ECHONET Lite普及のために、工程表を作成し、議論を重ねていくことが決まった。

 ECHONET Liteは、家電機器の運転状況を操作したり、消費電力量データを送受信するなどの機能を持たせた通信プロトコル。ECHONET Lite対応の家電製品が登場すれば、HEMS機器などから信号を送って、運転状況を操作することが可能になる。現在のHEMSは消費電力量の測定結果を提示するだけだが、ECHONET Liteが普及すれば、消費電力量を自動的に削減するために、家電機器を操作することが可能になる。

 次回以降の会合で工程表作成に入ると見られる。工程表は、5つの課題に対応するスケジュールを示すものになる見込み(図1)。

ECHONET Lite 図1 今後の会合で検討していく5つの課題。家庭におけるエネルギー消費量を細かく管理することが大きな狙いだとみられる

 1つ目の課題は、ECHONET Liteで通信、制御する機器の中でも「重点機器」を8つ選定し、その機器が通信する際の通信方法を決めること。ECHONET Liteは、家電製品の制御などの通信の際に送信するデータの形式や順序を決めたもの。現時点では、通信方法を特に決めていない。

 通信方法としては、無線LAN、PLC(電力線通信)、920MHz帯を利用した特定小電力無線の3種類が有力。8つの重点機器の候補にはスマートメーター、太陽光発電システム、蓄電池、燃料電池、電気自動車/プラグインハイブリッド自動車、エアコン、照明機器、給湯器が挙がっている。発電機器、蓄電機器、大電力を消費する家電製品を選定し、それらの製品からECHONET Liteの普及を進めていこうという狙いだ。

 2つ目の課題は、8つの重点機器の運用マニュアルを整備すること。3つ目の課題は、他社製品との相互接続が可能であることを検証することと、その結果に応じて機器を認証する体制を作ること。

 4つ目の課題はECHONET Liteの国際標準化だ。ヨーロッパやアメリカでも家電製品を制御する通信プロトコルの策定が進んでいるが、機器の電源を入れたり切ったりする機能しか持たず、細かく運転状態を制御することができない。ECHONET Liteの優位な点をアピールし、世界展開を狙うほか、ヨーロッパやアメリカで策定が進んでいる規格との相互接続も検討する必要があるとしている。

 5つ目の課題は、デマンドレスポンスシステムが送受信するデータ形式の統一。HEMSやECHONET Liteに直接関係するものではないが、家庭に設置したスマートメーターとデマンドレスポンスシステムが通信できるようになると、デマンドレスポンスの対象を家庭にも広げられる。

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