BEMSで消費電力量を監視制御し、運用改善で快適な環境を維持しながら節電BEMS製品解説(3)

BEMSアグリゲータ幹事会社が提供するシステムの特長を解説する特集の第3回。今回はイーエムシーが提供するシステム「EGW+plus」について解説していく。同社はBEMSのシステムをなるべく最小限にとどめており、ユーザーにとって導入しやすいものになっている。

» 2012年06月29日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

イーエムシーは2013年3月15日にBEMSアグリゲータのサービスを停止しました。この記事はサービス停止以前に掲載したものです。

Specification 図1 イーエムシーが提供するBEMS「EGW+plus」の主な仕様。補助率は緊急時に節電に協力するかどうかによって変わる。契約電力が501kW以上、1000kW未満の場合でも、節電効果が認められる場合は補助の対象となる可能性がある

 イーエムシーが提供するBEMS「EGW+plus」は、BEMSアグリゲータ制度が対象とするビルの中でも中小規模のビルをターゲットにしたシステムだ(図1)。基本的には契約電力が50〜500kWのビルに対応する。特長としては、BEMSを構成する機器を最小限にとどめ、初期導入コストを低く設定したことが挙げられる。さらに、毎月の利用料も3000円とかなり低く設定しているので、ユーザーにとっては導入しやすいシステムと言える。

 対象となる施設はオフィスや店舗などとなっているが、実際は多様な施設に対応できる。同社は節電コンサルティング事業を手がけており、これまでにガソリンスタンド、銀行、葬儀場など、多様な施設の節電で実績を上げている。

 EGW+plusは、ビルのキュービクル(高圧受電設備)でビル全体が消費している電力量を計測し、分電盤の回路で空調機器や照明器具の消費電力量を計測する。目標とする電力値をユーザーが設定し、その値を超えないように空調機器の運転を制御する。

 具体的には空調機器を5つのグループに分け、消費電力量が目標値に近づいたら5つのグループに分けた空調機器のうち、1グループの運転を止める。1グループの運転を止めるといっても、固定した1つのグループを止めるわけではない。1つのグループの空調を停止させ、一定の時間が経過したらほかのグループの空調を止め、それまで運転を止めていたグループの機器を再び動作させる。停止させるグループを変える、巡回で停止させるということだ。

 消費電力量のデータは同社が管理するデータセンターに送信し、ユーザーごとに蓄積、集計する。集計結果や消費電力量の推移はグラフの形で確認できる。グラフは、データセンターにWebブラウザでアクセスすると確認できる。

Graph 図2 消費電力量を示すグラフをタブレットで表示したイメージ図

 需要が逼迫するという知らせをデータセンター側で受信したら、ユーザーに電子メールで警告を送りながら、ユーザーが設定した消費電力の目標電力値を引き下げる。目標電力値が下がると、空調機器が巡回停止する回数が増え、消費電力量を下げられるのだ。

System Overview 図3 EGW+plusが備える主な機能

 この機能だけでも消費電力量を抑えられるが、同社によると自動制御はあくまでスタート地点でしかないという。空調の巡回停止は、ビルで過ごす人に節電を強く意識してもらうという狙いもあるという。

 同社は、消費電力量を大幅に下げるために、システムを導入した後に運用改善のアドバイスを顧客に提示する。このアドバイスを守ってもらうだけで消費電力量が10%以上減ることも珍しくないという。こうなれば、空調が巡回停止することもかなり少なくなる。

 この方式は、同社の「BEMSなどの機器を設置しただけでは節電効果はそれほど大きくならない。設置したあと、どのように空調などの機器を運用してもらうかが大切」という考え方を反映している。

 例えば、節電の一環として昼休みの1時間は照明を消灯するという活動に取り組んでいる施設は少なくない。1時間の消費電力は削減できるが、昼休みが終わった後に照明を再点灯するときに問題が起こる。あちこちで一斉に照明を点灯すると、その瞬間だけ電力値が跳ね上がるのだ。最悪の場合、このタイミングが電力消費のピークとなってしまい、その後1年間の電気料金の基本料を上げてしまうこともある。

 同社は実地を調査し、機器を設置した後、消費電力量の推移などのデータを見て、このような問題を見付け出し、改善策をアドバイスする。例えば先に挙げた例ならば、照明を再点灯するタイミングをずらすことで、大きなピークを作らずに済む。

 先に述べたように、同社はさまざまな施設を対象に節電コンサルティング事業を続けている。施設の種類に応じて、確実に節電できる方法をアドバイスできると自信を見せる。

 運用改善で効果が上がると、多くの顧客は節電への意欲を強く持ち始め、さらに消費電力量を下げる方法を探し始めるという。そのような顧客には、さらに節電効果を上げるために運用改善についてアドバイスするだけでなく、消費電力量が少ない機器への入れ替え、つまり設備改善を提案することもある。

 ただし設備改善を提案するときも、ユーザーの投資対効果を考慮して、なるべく少ない投資で大きな効果を期待できる方法を提案するという。例えば、天井照明の消費電力量を下げたいというユーザーには、いきなりLED照明への入れ替えを提案するのではなく、蛍光灯の裏側に反射板を配置して、蛍光灯の本数を減らすといった方法を提案する。

 このように、イーエムシーのシステムはBEMSとしての機能はシンプルだが、その後の運用改善で大きな節電効果を得ることを狙ったものだ。運用改善が鍵となるシステムゆえ、補助金の補助率もユーザーの協力次第で変わる部分がある。

 補助率を1/2とするにはまず、需要逼迫時に同社のデータセンターからBEMSを操作することを容認することが前提となる。さらに、需要逼迫時に取るべき行動について同社からアドバイスを受け、それに従い節電に協力するという旨の同意書を交わす必要がある。

 反対に、店舗など来客がある施設では需要逼迫時でも空調を一部止めるなど、快適さを損なうような行動は避けたいと考えるユーザーもいる。そのような場合は同意書を交わさず、補助率を1/3とすることが多くなるだろう。

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