省エネだけではない「美しい照明」を、環境省が事例募集開始LED照明

LED照明などの省エネ型照明器具を導入する企業が増えている。しかし、既存の照明器具から単純に入れ替えただけという企業も少なくない。環境省は省エネだけでなく、デザインの美しさも両立した照明導入事例の募集を始めた。

» 2012年08月28日 07時15分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 環境省は2012年8月27日から、2014年度の「省エネ・照明デザインアワード」の募集を始めた。オフィスビル、商業施設、店舗などに新しい照明器具を導入した例を対象に、施設や照明器具の特性を生かし、照明器具の配置などを工夫して見た目に美しい空間づくりに成功しながら、高い省エネ効果を得ている例を募集するもの。

 募集期間は2012年10月12日まで。結果発表は2013年1月15日の予定。入選した事例は、環境省が発行する「省エネ・照明デザインブック」や、環境省のWebページ、雑誌などを通して全国に紹介するとしている。環境省は優れた事例を広く紹介することで、省エネ型照明器具の導入を促進することを狙っている。

 応募にあたっては、「公共施設・総合施設部門」「商業・宿泊施設部門」「まち、住宅、その他部門」の3部門から当てはまる部門を選んで応募する。審査委員会は3部門それぞれのグランプリ(3点ずつ)と優秀事例(合計20点ほど)を選ぶ。審査委員会のメンバーは照明デザイナーの石井幹子氏、工学博士の大谷義彦氏、デザイナーの川上元美氏、工学博士の竹内徹二氏。

 公共施設・総合施設部門の対象はオフィス、映画館、駅、病院、学校、図書館など。商業・宿泊施設部門の対象は飲食店、百貨店、ショッピングセンター、コンビニエンスストアなど。まち、住宅、その他部門の対象は商店街、道路、公園、集合住宅など。どの部門も対象は新築、改築を問わない。

 主な評価項目は、省エネ効果、デザイン、再現可能性、実用性、経済性など。高い省エネ効果を得ながら、美しいデザインに仕上げるだけでなく、ほかの企業が再現しやすいもの、継続して利用できるものという観点を重視する。

 例えば、昨年度の優秀事例に入選した医薬品原料メーカー「宏輝」本社オフィスの事例を見ると、元々美術館だったテナントに上手に照明器具を導入している(図1)。

図1 2011年度の優秀事例に入選した宏輝のオフィス。照明器具が机から伸びた支柱に付いていることが分かる

 美術館として使っていたため、天井が高く、大きな開口部があり、開放感を感じる空間だが、元々天井に設置してあった照明器具や空調機器を使用すると、照明と空調にかかるコストがかなり高くなることが分かっていた。

 そこで、空調は床下から風を吹き出させるものに換え、オフィスで活動する人の周辺を効率良く冷やしたり、温めたりすることができるようにした。

 さらに、照明器具の設置場所を工夫した。高い天井に取り付けてしまうと、机上を十分明るく照らすことが難しくなる。そこで、照明器具は机から上に伸びた支柱に取り付けることにした。光源はLEDだ。机に近い位置から机上を照らせるようになったので、消費電力を節約できたという。さらに、照明器具が机に付いているので、レイアウト変更にも柔軟に対応できるというメリットもある。

 LED照明ならではの特長も活用している。LED照明には、光色を変える「調色」という機能を使えるものが多い。そこで、人間の生体リズムに合わせて光の強さだけでなく色も変える機能を取り入れた。これは、「サーカディアンリズム」という考え方に基づいたものだ。

 このように2011年度の入選事例を見ると、開放感を感じさせるというオフィス空間の特長を生かしながら、効率良く作業面を照らす方法を工夫していることが分かる。さらに、サーカディアンリズムに基づく調光、調色で働く人の生体リズムにも配慮している。しかも、機器を特別に注文したということもないので、ほかの企業も簡単にこの方法を取り入れることができる。

 省エネ型照明の導入に当たって、ほかにはないこだわりがあるという企業は応募してみてはいかがだろうか。

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