電費性能の世界記録を更新、トヨタが小型EVを発表電気自動車

主要自動車メーカー各社が電気自動車(EV)を市場に投入している中、目立つ動きを見せていなかったトヨタ自動車がついにEVを発表した。車体は小柄だが、電費性能は「フィットEV」を超える世界一の値を達成したという。

» 2012年09月25日 09時15分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 トヨタ自動車は電気自動車(EV)の新製品「eQ(イーキュー)」を発表した(図1)。2012年12月以降に、日本と米国で自治体などに限定して販売を始める。価格は税込みで360万円。

図1 トヨタ自動車の電気自動車「eQ(イーキュー)」

 eQの最大の特徴はその電費性能。現在市販しているEVの中で電費性能が世界一の車種は本田技研工業の「フィット EV」。1km走行するために必要な電力を示す「交流電力量消費率」は106Wh/kmだが、eQの交流電力量消費率は104Wh/kmと、フィットEV以上の値を記録している。

 ただし、満充電状態から電力を使いきるまで走行できる距離を示す「一充電走行距離」は100kmとかなり短い。これは、搭載するリチウムイオン蓄電池の蓄電容量が12kWhと小さいためだ(図2)。

図2 日本で市販している電気自動車とeQの主な仕様を比較した表

 蓄電容量が小さいという点が、良い方向に働いているところもある。充電にかかる時間が短いのだ。交流200Vの普通充電なら、満充電までおよそ3時間で済む。急速充電なら約15分で蓄電容量の80%まで充電できる。蓄電池はパナソニックグループ エナジー社の製品を採用した(図3)。

図3 パナソニックグループ エナジー社のリチウムイオン蓄電池。左がEV/PHV(プラグインハイブリッド車)向けで、右がハイブリッド車向け

 車体の大きさは、三菱自動車工業の「i-MiEV G」に近いが、全幅が1680mmと広いところが目を引く。全幅が1700mm以下に収まっているため、5ナンバー扱いとなる。

 そのほかの仕様は以下の通り。乗車定員は4名。最高速度は125km/h。トヨタ自動車の高岡工場で生産する。

2015年末までに21モデルのHVを投入、PHVはV2Hに進む

 トヨタ自動車はeQの発表と同時に、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の開発予定を明らかにした。まず、HVについては2015年末までの3年間に新型のHVを21モデル投入することを明らかにした。2013年以降、2015年までの全世界におけるトヨタ自動車の年間HV販売台数は100万台を超えると見込んでいる。

 PHVについては、自動車の電源を住宅で利用可能にする「Vehicle to Home(V2H)」への取り組みを始めることを明らかにした。まずは、自動車の電源を非常時に利用可能にする「アクセサリーコンセント」を売り出す。

 FCVは開発は進んでいるが、市場投入にはまだ時間がかかる。セダンタイプのFCVを2015年頃に市場投入することを目指し、燃料電池の性能向上、小型軽量化を進めている。現時点で、燃料電池スタック(水素で発電する「セル」を何枚も重ねてパッケージにしたもの)の発電効率は世界最高の3kW/lに達しているという。さらに、この燃料電池スタックは前世代品と比べて大きさが半分になったという。燃料電池システムの小型、軽量化はコスト削減に大きく寄与するという。

 FCVの分野では、トヨタ自動車は日野自動車と共同で燃料電池バス(FCバス)の開発を進めている。FCバスは2016年の市場投入を目指して、開発を進める。

 さらに、次世代の蓄電池や自動車向けの非接触充電技術の開発に取り組んでいる。非接触充電技術については、2013年に愛知県豊田市で実証実験を始めることを予定している。

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