30億円を投じても元は取れる、風力発電所2カ所を買収自然エネルギー

大阪ガスの100%子会社で、再生可能エネルギーによる発電事業を手掛けるガスアンドパワーは、日本風力発電が保有している風力発電所2件を買収する。大阪ガスはおよそ30億円の費用がかかると見積もっているが、売電収入で十分採算は取れると判断した。

» 2012年11月07日 07時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 ガスアンドパワーが買収するのは、「肥前風力発電株式会社(佐賀県唐津市肥前町)」と「平生風力開発株式会社(山口県熊毛郡平生町)」。日本風力発電が保有する株式をすべて取得する。この結果ガスアンドパワーは肥前風力発電の発行済み株式を100%、平生風力開発の発行済み株式を99.8%保有することになる。今回の買収でガスアンドパワーが運営する風力発電所は5カ所となり、最大出力の合計値は85MW(8万5000kW)となる。

 肥前風力発電が運営している発電所は唐津市肥前町の沿岸部に位置している。平生風力開発の発電所は、熊毛郡平生町の半島部に位置しており、瀬戸内海に面している(図1)。

図1 ガスアンドパワーが買収した2社が運営する風力発電所の位置。上が肥前風力発電、下が平生風力開発

 肥前風力発電の発電所には出力1.5MW(1500kW)の風車が20基設置してあり、合計の最大出力は30MW(3万kW)に達する。平生風力開発の発電所には出力1.5MWの風車が6基設置してあり、合計出力は9MW(9000kW)となる(図2)。

図2 肥前風力発電(左)と平生風力開発(右)がそれぞれ運営している発電所

 大阪ガスは2件の発電所の買収におよそ30億円かかると見ているが、十分採算は取れると判断して、買収を決めた。買収前に発電実績や風況などを調査した結果、肥前風力発電では年間4万MWh(4000万kWh)、平生風力開発では年間1万5000MWh(1500万kWh)の発電が可能と考えているという。

 現時点で2件の発電所は、固定価格買取制度を利用せずに電力会社に売電しているが、固定価格買取制度を利用すれば1kWh当たり23.1円で売電できる。先に挙げた年間発電量の予測値を単純に当てはめれば、2件の発電所の年間合計発電量は5万5000MWh(5500万kWh)で、年間に12億7050万円の収入を得られる計算になる。30億円ならば2年と数カ月で回収できる。

 ただし固定価格買取制度では、建築時に補助金を利用していると買取価格が割引になる。日本風力発電は2件の風力発電所の建設のために補助金を利用しているという。買い取り期間も運転開始時から20年間となるので、今から固定価格買取の契約を結んだとしても、売電できる期間は短くなる。肥前風力発電では2005年に施設の稼働を始めており、平生風力開発では2009年から稼働している。売電できる期間はそれぞれ13年と17年になる。

 以上のような制限がかかるだけでなく、発電所を運用していくコストなども計算に入れなければならない。単純に2年数カ月で30億円を回収できるということにはならないが、発電量と買い取り期間を考えると十分回収を見込めそうだ。

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