摩周湖近辺で温泉発電、北海道で初めて経産省の認可を受ける自然エネルギー

温泉発電の普及がゆっくりと進んでいる。再生可能エネルギーの固定価格買取制度では、温泉発電は小規模な(1万5000kW未満)地熱発電による電力と見なされる。売電価格は1kwhあたり42円とかなり高く、上手く稼働を始められれば短期間でコストを回収できる見込みが立つ。経済産業省の北海道経済産業局は、北海道の摩周湖周辺における温泉発電計画に設備認定を出したことを明らかにした。

» 2013年02月20日 09時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 摩周湖周辺で温泉発電を計画し、経済産業省に認定申請を出していたのは、東京の出版社である国書刊行会の関連会社であるセイユウ。計画では北海道弟子屈町(てしかがちょう)の摩周湖周辺の温泉源泉から引き出した温水を利用し、バイナリー発電機で発電することになっている。稼働開始は2013年9月の予定。

 11月末のデータでは再生可能エネルギーの固定価格買取制度における設備認定を受けた地熱発電設備は1つだけ。今回の例は北海道初の例となるだけでなく、全国で2番目の例となるかもしれない。

 発電にはゼネシスが開発したバイナリー発電機「Mini-DTEC」を使用する(図1)。最大出力は100kWで、ほとんどの時間は60〜80kWで稼働する。使用する温泉水は毎分500リットルで温度は97℃程度だという。発電に利用した温排水はビニールハウスを温めるなどの用途で再利用する予定。

図1 ゼネシスのバイナリー発電機。出典:ゼネシス

 この発電設備は出力1万5000kW未満の地熱発電設備という扱いになるので、売電価格は1kWh当たり42円というかなり高い価格が付く。2012年度の太陽光発電による電力買取価格と同じ価格だ。

 ただし温泉発電には太陽光発電にない大きな特長がある。設備利用率の高さだ。太陽光発電では12%程度だが、地熱発電では一般に70%程度は期待できる。今回の計画で発電設備を供給するゼネシスは設備利用率を80〜95%と見ている。

 仮に設備稼働率を70%とすると、今回の計画なら年間で2500万円以上の売電収入を期待できる。太陽光発電で同程度の売電収入を得るには、最大出力が580kW以上の設備を建設する必要がある。

 国書刊行会は温泉熱資源は日本全国至る所に存在しており、有効な温泉井戸さえ見つかれば、中小企業で容易に参入できるとしている。温泉地との連携、調整さえうまく進められれば、今後事例も増えていくだろう。太陽光発電による電力の買取価格が2013年度から引き下げとなる見込みだが、その後は温泉発電がますます注目を集めるかもしれない。

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